一級建築士でも迷った間取り|ボツ案と採用案を比較します(準備中)
一級建築士として自邸を設計した我が家ですが、実は最後まで迷っていた間取りがありました。
当初はそのプランで進めるつもりでしたが、
「このままで本当にいいのか?」
「別の考え方のほうが暮らしやすいのでは?」
そんな違和感から、直前で大きく方向転換しています。
敷地は東・南を隣地に囲まれ、北側も建物があり、日当たりや視線に制約がある条件です。
その中で旧プランは、西側の道路と奥の“抜け”を活かす間取りでした。
確かに明るく、開放感のあるプランです。
ただしその魅力は、ある前提に強く依存していました。
それが「西側に建物が建たないこと」です。
もし将来、目の前に家が建ってしまったら——
その開放感は一気に失われてしまいます。
結果として選んだのは、
外に頼らず、内側に光と抜けをつくる「坪庭中心の間取り」
でした。
この記事では、
- なぜ最初のプランをやめたのか
- もしそのまま建てていたらどうなっていたか
- 採用した間取りと何が違うのか
を、実体験ベースで解説します。

最初に考えていた「西側に開く間取り」
最初に考えていたのは、西側の道路と奥の抜けに向かって開くプランです。
リビングや主要な開口部を西に向け、外の広がりをそのまま室内に取り込む考え方でした。
いわば「外の環境を積極的に取り込む設計」です。
このプランの良かった点
ボツ案とはいえ、当然ながら魅力もありました。
西側の抜けによる開放感
視線が遠くまで抜けるため、実際の面積以上に広く感じられます。
昼〜夕方にかけての明るさ
西日にはなりますが、午後以降もしっかり光が入るため、明るい空間になります。
一般的に本州では「西日は避けるべき」と言われることが多いですが、北海道のような積雪寒冷地では必ずしもデメリットとは限りません。
冬の日射は貴重で、特に午後の西日は室内をじんわり暖めてくれるため、
長い冬を快適に過ごすうえではむしろメリットになる側面もあります。
西日=悪いもの
という前提だけで判断するのは少しもったいないかもしれません。

外とのつながりがつくりやすい
道路側とゆるやかにつながることで、開放的で伸びやかな暮らしがイメージできました。
やめた決定的な理由
魅力はありましたが、最終的にこのプランは採用しませんでした。
理由はシンプルで、
「外部環境に依存しすぎている」と感じたからです。
将来の不確実性が大きい
西側の抜けは、あくまで“現状”の話です。
- 将来、向かいに住宅が建つ可能性がある
- 建てば視線も日当たりも大きく変わる
つまりこのプランは、コントロールできない要素に快適性を委ねている状態でした。
視線ストレスのリスク
もし西側に家が建てば、
- 窓の先に見えるのは隣家
- カーテンを閉める時間が増える
- 結果として、せっかくの開口が活かせない
という状態になる可能性があります。
坪庭の計画と相性が悪かった
もうひとつ大きかったのが、当初から考えていた「坪庭のある暮らし」との相性です。
我が家では、快適性や心地よさを考えたときに、旅館のような和のテイストを感じられる坪庭を計画の前提にしていました。
この坪庭は、ただ設けるだけでなく、できるだけ多くの居室から楽しめることを重視しています。
滞在時間の長いリビング、ここと坪庭を繋げようと思うと、必然的にガレージに隣接した坪庭になります。
しかし、西側の抜けを活かすプランにすると、
- 西側=道路側に開く
- 同時にガレージ配置も西側になる
という関係になり、結果として坪庭に面する居室が制限されてしまう計画になります。
せっかくの坪庭があっても、それを感じられる場所が限られてしまうのは本末転倒です。
そのため今回の計画では、
「外の抜けを活かすこと」よりも、「敷地内に心地よさをつくり、それを共有できること」
を優先する判断をしました。
もしこの間取りで建てていたら
仮にこのプランを採用していた場合、暮らしはどうなっていたか。
想像すると、おそらくこうなります。
- 最初は開放的で満足度が高い
- 数年後、西側に建物が建つ
- 視線が気になりカーテンを閉める
- 光も抜けも失われる
- 「この窓、必要だった?」となる
つまり、
“時間とともに暮らしの質が下がる家”になっていた可能性があります。
採用した「坪庭中心の間取り」
※ここに図面
最終的に採用したのは、坪庭を中心に内側へ開くプランです。
外の環境に頼るのではなく、敷地の中に光と抜けをつくる考え方に切り替えました。
採用案で変えたポイント
外部環境に依存しない設計
坪庭によって、
- 採光
- 通風
- 視線の抜け
をすべて敷地内で完結させています。
視線コントロールがしやすい
外に大きく開かないため、
- カーテンに頼らない暮らし
- 常に安定した視線環境
が実現できます。
将来の変化に強い
周囲にどんな建物が建っても、暮らしの質が大きく変わらないのが特徴です。
まとめ|間取りは「前提条件」と「優先順位」で決まる
今回の経験から強く感じたのは、
間取りは単体で良し悪しを判断できないということです。
- どんな敷地条件なのか
- 周囲の環境は将来どう変わるか
- 自分でコントロールできる要素かどうか
これらによって、
同じ間取りでも評価は大きく変わります。
そしてもうひとつ重要なのが、「何を優先するか」です。
今回の計画では、
- 外の抜けによる開放感
よりも - 坪庭による心地よさの共有
を優先しました。
一見魅力的に見えるプランでも、その成立条件と優先順位を整理することで、選ぶべき答えは大きく変わります。
これから家づくりをされる方はぜひ、
「その快適さは誰が担保しているのか?」
という視点で間取りを見てみてください。
それだけで、判断の精度は確実に上がるはずです。






