一級建築士の27坪の自邸から学ぶ家づくり|土地・予算・設計・性能・暮らし
家づくりを始めると、「何から考えれば良いのだろう」と迷うことがあると思います。
私は100棟以上の住宅づくりに携わり、自分自身でも約27坪の自邸を設計しました。
このページでは、自邸で実際に考えたことをもとに、家づくりをどのような順番で考えれば良いのかをご紹介します。

家づくりについて調べ始めると、土地、住宅会社、間取り、住宅性能、住宅ローンなど、たくさんの情報が出てきます。
私自身、住宅の設計だけでなく、営業や施工管理にも携わってきましたが、家づくりでは一つひとつの知識と同じくらい、考える順番が大切だと感じています。
たとえば、まだ家づくり全体の予算が見えていない段階で土地を購入すると、あとから建物に使える予算が足りなくなるかもしれません。
間取りを先に考えても、自分たちがどんな暮らしをしたいのかが整理できていなければ、部屋数や広さを決める基準がありません。
だから私は、最初から間取りを考えるのではなく、
どんな暮らしをしたいのか。
というところから家づくりを考えることが大切だと思っています。
私たち夫婦も、最初から「27坪の家を建てよう」と考えていたわけではありません。
駅から近い場所で暮らしたい。
家の中から緑を感じたい。
冬でも暖かく過ごしたい。
限られた予算の中でも、毎日の暮らしを少し豊かにしたい。
そうした希望を一つずつ整理し、予算や土地、間取り、住宅性能を考えていった結果として、現在の約27坪の住まいになりました。
このサイトでお伝えしたいのは、
「満足度は家の大きさに比例しない」ということです。
家族構成も、予算も、土地の条件も、望んでいる暮らしも人によって違います。
大切なのは、情報の中から誰かの正解を探すことではなく、
自分たちは何を大切にして、どのような暮らしをしたいのか。
を考えることだと思っています。
このページでは、家づくりを次の7つのSTEPに分けてご紹介します。
- どんな暮らしをしたいのか考える
- 家づくり全体の予算を考える
- 土地を選ぶ
- 住宅会社を選ぶ
- 広さと間取りを考える
- 住宅性能を考える
- 実際の暮らしまで考える
最初から順番に読んでいただいても構いません。
すでに土地や間取りなど、気になっていることがある方は、次の「気になるテーマから読む」から該当するSTEPへ進んでください。
気になるテーマから読む
すでに悩んでいることが決まっている方は、こちらからお読みください。
- 何から家づくりを始めればよいか分からない方
→ STEP1|間取りの前に「どんな暮らしをしたいか」を考える - 家づくりにいくら使ってよいのか迷っている方
→ STEP2|土地を探す前に、家づくり全体の予算を考える - 土地選びで迷っている方
→ STEP3|土地は「条件」だけで選ばない - 住宅会社をどう選べばよいか分からない方
→ STEP4|住宅会社は「価格」や「性能」だけで選ばない - 必要な広さや間取りを考えたい方
→ STEP5|広さと間取りは、暮らしに必要な場所から考える - 断熱や換気など、住宅性能が気になる方
→ STEP6|住宅性能は、数字だけでなく暮らしとのバランスで考える - 実際に住んでからの良かったことや後悔を知りたい方
→ STEP7|家は、暮らして初めて分かることがある
家づくりの流れに沿って考えたい方は、STEP1から順番にご覧ください。
〖STEP1〗間取りの前に「どんな暮らしをしたいか」を考える


家づくりを始めると、
「何坪くらい必要だろう。」
「LDKは何畳あれば良いだろう」
「どんな間取りにしよう。」
と考えたくなると思います。
私自身も住宅設計の仕事をしていますが、自邸を考えるときに最初から「27坪の家を建てよう」と決めていたわけではありません。
最初に考えたのは、
この家で、どのように暮らしたいのか。
ということでした。
私たち夫婦が「家づくりで大事にしたいこと」を考えることから始め、以下のことを大切にしました。
- 駅から近い場所で暮らしたい
- 家の中から緑を感じたい
- 冬でも暖かく過ごしたい
- 家の中に落ち着いて過ごせる場所が欲しい
- 限られた予算の中でも、毎日の暮らしを少し豊かにしたい
その結果、自邸では、
- 家の中から緑を眺められる坪庭
- 冬でも快適に暮らすための断熱性能
- 外とのつながりを感じられるお風呂
- 落ち着いて過ごせる夫婦それぞれのプライベート空間
- 自然素材に囲まれた設い
を取り入れています。
これらを全て実現しながら床面積も大きくすれば、当然、建築費は上がります。
そこで私は、必要以上に家を大きくすることよりも、自分たちが毎日の暮らしで大切にしたい場所へ予算を使うことを選びました。


小さい家にすること自体が目的だったわけではありません。
自分たちが大切にしたいものを一つずつ考え、優先順位を整理していった結果、延床約27坪という大きさになりました。
家づくりでは、すべての希望を同じ強さで実現することは難しいものです。
だからこそ私は、「何を諦めるか」を最初に考えるよりも、
何を一番大切にしたいのか。
を先に考える方が良いと思っています。
家づくりの最初から「何を諦めるか」を考えるのは、少し寂しい気がします。

ここが決まっていると、その後に土地や住宅会社、間取り、性能を検討するときにも判断しやすくなります。
このSTEPでまず読んでほしい記事
家を建てる目的から、必要な空間を考える理由をまとめています。
▶︎ 「なぜ家を建てるのですか?」一級建築士の私が間取りより先に大切にしていること
自邸をつくるときに、何を残し、何を手放したのかをまとめています。
▶︎ 一級建築士が自邸で「選んだもの・捨てたもの」
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
この段階では間取りを考えなくても大丈夫です。
まずは家族で、
- 今の暮らしで不満に感じていること
- 新しい家で大切にしたいこと
- 家でどんな時間を過ごしたいか
をそれぞれ3つくらい書き出してみてください。
その中で「これは絶対に大切にしたい」と思うものが、これから家づくりを進めるときの基準になります。
次のSTEPでは、自分たちが大切にしたい暮らしを実現するために、土地を探す前に家づくり全体の予算をどう考えたのかをご紹介します。

〖STEP2〗土地を探す前に、家づくり全体の予算を考える
家づくりを始めると、最初に土地を探したくなる方も多いと思います。
私自身も、自邸の土地を探すときには
「駅から近いこと」「できるだけ土地価格を抑えること」
など、いくつか条件を決めていました。
ただ、その前に考えていたのが、
「家づくり全体で、いくらまでなら無理なく使えるのか。」
ということです。
土地だけを先に購入してしまうと、その後の建物の見積金額を見て、
- 思っていたより建物にお金がかかる。
- 希望していた仕様を諦めなければならない。
ということにもなりかねません。
家づくりに必要なお金は、土地代と建物代だけではありません。
- 土地代
- 建物本体の工事費
- 外構や地盤改良などの付帯工事
- 登記や住宅ローンなどの諸費用
- 家具や家電、引っ越しなどの費用
こうした費用を含めて、家づくり全体で考える必要があります。
私たちの場合は、総額でおおよそ5,000万円を一つの目安にしていました。
その中で、建物にどのくらい必要なのかを考え、残った予算から土地に使える金額を考えていきました。
私が大切だと思っているのは、「土地はいくらまで買えるか」ではなく、
「家づくり全体の中で、土地にいくら使えるか」を考えることだと思っています。
土地に予算を使い過ぎれば、その分、建物に使える金額は少なくなります。
反対に、建物にこだわりすぎれば、希望している場所で土地を探すことが難しくなるかもしれません。
私自身も、
- 駅から近い場所で暮らしたい
- 冬でも暖かい家にしたい
- 坪庭や書斎など、暮らしを豊かにする場所をつくりたい
という希望がありました。
だからこそ、土地・建物・性能・設計のどれか一つだけに予算を使うのではなく、全体のバランスを考える必要がありました。
家づくりの予算には「正解の割合」があるわけではありません。
土地価格は地域によって大きく違いますし、建物価格も広さや仕様、住宅会社によって変わります。
大切なのは、自分たちが無理なく返していける金額を確認したうえで、
その予算を、土地と建物にどう配分するか。
を考えることだと思っています。
このSTEPでまず読んでほしい記事
土地・建物・諸費用をどのような順番で考えればよいのか、自邸の予算をもとに詳しくまとめています。
▶︎ 家づくりの予算はどう決める?土地・建物・諸費用を一級建築士が整理
家づくり全体の予算が見えてきたら、次に考えたいのが「その予算を何に使うか」です。
広さ・立地・住宅性能・素材など、限られた予算の中で何を優先するかについてはこちらで整理しています。
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
まだ土地の価格だけを見なくても大丈夫です。
まずは、
- 毎月いくらまでなら無理なく返済できそうか
- 家づくり全体でいくらまで使えるのか
- 建物にはどのくらいの予算が必要になりそうか
- 土地に使える金額はいくらくらい残るのか
を大まかに整理してみてください。
この段階で、1万円単位まで細かく決める必要はありません。
「土地にいくらまで使ってよいのか」が見えてくるだけでも、その後の土地探しはかなりしやすくなります。
次のSTEPでは、この予算と優先順位をもとに、私たちがどのような条件で土地を探し、なぜ敷地面積約27坪の土地を選んだのかをご紹介します。

〖STEP3〗土地は「条件」だけで選ばない


土地探しでは、
- 駅から近い
- 日当たりが良い
- 土地が広い
- 価格が安い
など、できるだけ条件の良い土地を選びたいと思うものです。
ただ、価格・立地・広さ・日当たり・周辺環境など、すべての希望を満たす土地はなかなか見つかりません。
私たちも、STEP1で整理した暮らしの希望と、STEP2で考えた予算をもとに土地を探しました。
とくに重視していたのは、
- 駅から近いこと
- 土地価格が1,300万円以下であること
- 建築費を抑えるため、平坦な土地であること
その条件で出会ったのが、現在暮らしている敷地面積約27坪の土地です。
最初に見たときは、正直に言うと
「やはり小さいな。」
と感じました。
位置指定道路に面していることも含め、誰が見ても条件の良い土地だったわけではありません。
それでも、駅から徒歩圏内で、予算にも収まり、そのとき市場に出ていた土地の中で、自分たちの希望に最も近い土地でした。
もちろん、もう少し待てば、もっと広くて条件の良い土地が出てきた可能性もあります。
ただ、それがいつ出てくるのかは分かりません。
そこで私は、
この土地の条件が良いか悪いかではなく、この土地で自分たちが望んでいる暮らしをつくれるか。
を考えることにしました。
土地を見るときに大切なのは、土地だけで判断しないことです。
例えば27坪という数字だけを見れば、狭いと感じる方も多いと思います。
しかし、
- 必要な駐車スペースは確保できるか
- 希望している部屋数は入るか
- 日当たりや周囲からの視線はどうか
- 雪をどこに置くか
- 法規制によって建てられる大きさはどのくらいか
- 地盤改良や造成など、追加費用がかからないか
まで考えると、その土地でできることが少しずつ見えてきます。
反対に、土地価格が安くても、造成や地盤改良、擁壁などに大きな費用がかかれば、家づくり全体では安くならないこともあります。
私は一級建築士として住宅づくりに携わってきましたが、土地選びと建物計画は、本来別々に考えるものではないと思っています。
土地を買ってから家を考えるのではなく、その土地にどんな家が建てられるのかを考えてから判断する。
この順番が大切です。
私にとって今の土地が「良い土地」になったのは、最初から欠点がなかったからではありません。
土地の特徴を理解し、その条件に合わせて設計することで、自分たちが望んでいた暮らしを実現できたからです。
このSTEPでまず読んでほしい記事
私たちがどのような条件で土地を探し、なぜ約27坪の土地を購入したのかを詳しくまとめています。
▶︎ 条件が悪い土地は本当にダメ?一級建築士が27坪の土地を選んだ理由
狭い土地だからこそ実際に困ったことや、設計・工事で考えたことはこちらで紹介しています。
▶︎ 狭小地はやめた方がいい?敷地面積27坪の自邸で感じたデメリットと解決方法
土地を購入する前に建物まで一緒に考える理由はこちらでまとめています。
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
土地を見つけたときは、「良い土地か、悪い土地か」だけで判断しなくても大丈夫です。
まず、
- STEP1で考えた暮らしを実現できそうか
- STEP2で決めた予算に収まりそうか
- その土地ならではのデメリットは何か
- 建物の計画によって解決できることと、できないことは何か
を整理してみてください。
土地の欠点が一つあるだけで候補から外すのではなく、
その条件を受け入れても、自分たちが望む暮らしをつくれるか。
そこまで考えてから判断すると、土地の見え方は少し変わると思います。
次のSTEPでは、土地探しと並行して考えておきたい、住宅会社の選び方についてご紹介します。

〖STEP4〗住宅会社は「価格」や「性能」だけで選ばない
土地や予算の方向性が見えてくると、住宅会社選びも具体的になります。
家づくりを始めると、
「坪単価はいくらか。」
「断熱等級はいくつか。」
「標準仕様には何が入っているか。」
といった数字を比較することが多いと思います。
もちろん、価格や住宅性能は大切です。
ただ、私は設計・営業・施工管理の仕事を経験する中で、数字だけでは分からない部分も住宅会社選びではとても重要だと感じてきました。
同じような断熱性能の家でも、実際の施工方法や現場での確認方法は会社によって違います。
同じような間取りでも、設計者がなぜその形にしたのかによって、暮らしやすさは変わります。
また、営業担当者との打ち合わせが良くても、実際に家をつくるのは設計者や現場監督、職人さんたちです。
そのため私は、住宅会社を見るときには、
- 自分たちの予算の中で無理なく建てられるか
- 自分たちが大切にしたい暮らしを理解してくれるか
- 設計の理由をきちんと説明してくれるか
- 住宅性能をどのようにつくり、確認しているか
- 現場が丁寧に管理されているか
を見ることが大切だと思っています。
特に住宅性能については、
「何を使っているか」だけではなく、「どのようにつくっているか」。
まで確認した方が良いと思います。
たとえば、高性能な断熱材を採用していても、施工が適切でなければ、本来の性能を十分に発揮できないことがあります。
反対に、使っている材料だけを見ると特別に見えなくても、施工方法や現場管理まで丁寧に考えている会社もあります。
私は施工管理も経験してきたため、住宅会社を判断するときには、完成した住宅だけでなく現場も見ることが大切だと感じています。
- 整理整頓されているか。
- 材料が丁寧に扱われているか。
- 断熱材がきちんと施工されているか。
- 細かな納まりまで考えられているか。
こうした部分には、その会社の家づくりに対する姿勢が表れると思っています。
また、住宅会社にはそれぞれ得意な家づくりがあります。
性能を重視する会社、デザインを得意とする会社、限られた敷地での設計を得意とする会社もあります。
だから私は、
「どの住宅会社が一番良いか」ではなく、「自分たちの家づくりに合っているか」を考えることが大切だと思っています。
STEP1で考えた「大切にしたい暮らし」と、STEP2で整理した予算、STEP3で選んだ土地。
その条件を伝えたときに、どのような提案をしてくれるのか。
そこを見ると、住宅会社との相性も少しずつ見えてきます。
このSTEPでまず読んでほしい記事
私が住宅会社を見るときに、性能の数字だけではなく「つくり方」まで確認している理由を詳しくまとめています。
▶︎ 住宅会社選びで私が見ていること|性能の数字だけでは分からない「つくり方」
住宅展示場を見るときも、豪華な設備や広いLDKを見るだけではなく、「自分は何に惹かれたのか」を考えると、自分たちが大切にしたいものが見えやすくなります。
▶︎ 住宅展示場で見るべきなのは「家」ではない|一級建築士が教える「好き」の見つけ方
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
住宅会社を比較するときは、価格表や性能表だけで決めなくても大丈夫です。
候補の会社について、
- 自分たちが大切にしたい暮らしを理解してくれそうか
- なぜその間取りや仕様にするのか説明してくれるか
- 性能をどのような施工で実現しているか
- 実際の建築現場を見せてもらえるか
- 予算について現実的に話してくれるか
を確認してみてください。
そして、
「この会社なら、自分たちと一緒に家を考えていけそうか。」
という視点でも見てほしいと思います。
次のSTEPでは、土地と住宅会社が見えてきたあとに、必要な床面積や部屋数だけではなく、どのように間取りを考えていけばよいのかをご紹介します。

〖STEP5〗広さと間取りは「暮らし」から考える


土地と住宅会社が見えてくると、いよいよ間取りを具体的に考える段階に入ります。
ここでは、単純に「何坪にするか」「何LDKにするか」を決めるのではなく、
これまで考えてきた暮らしや土地の条件を、どのように住まいの形へ変えていくか。
を考えていきます。
私の自邸は、敷地面積・延床面積ともに約27坪です。
この限られた面積の中で私が考えたのは、部屋をできるだけ多くつくることではありませんでした。
どこで過ごしたいのか。
どこから何を見たいのか。
家の中にどのような居場所が必要なのか。
そうしたことを一つずつ整理しながら、間取りを組み立てています。
自邸では、まず坪庭の位置を考えました。
坪庭を単独の庭としてつくるのではなく、家の中から光や緑を感じられる場所として計画したかったからです。
坪庭の位置が決まると、
- どこに窓を設けるか
- どこへ視線を抜くか
- 浴室をどこに置くか
- それぞれの部屋をどうつなぐか
といったことも少しずつ決まっていきました。
また、1階にはガレージや水回り、寝室などを配置したため、LDKは2階に計画しています。
2階にすることで、周囲からの視線を抑えながら光を取り込みやすくなり、結果として私たちの土地には合った選択になりました。
限られた面積の家では、すべての部屋を広くすることはできません。
だからこそ、
どこを広く感じたいのか。
どこはコンパクトでもよいのか。
という考え方が大切になります。
自邸では、床面積そのものを増やす代わりに、
- 視線が遠くまで抜けること
- 窓の先に空や緑が見えること
- 部屋同士を必要以上に分断しないこと
- 一つの場所に役割を持たせすぎないこと
- 家の中にいくつかの居場所をつくること
を意識しました。
人が感じる広さは、床面積だけでは決まらないと思っています。
同じ17畳のLDKでも、窓の位置や家具の配置、天井のつながり、外への視線によって、感じ方は大きく変わります。
反対に、数字上は広くても、家具を置いたことで動きにくくなったり、落ち着いて過ごせる場所がなかったりすることもあります。
だから私は、間取りを考えるときに、
「何畳あるか」だけではなく、「そこでどう過ごせるか」を見ることが大切だと思っています。
私が目指したのは、27坪を実際より大きく見せることではありません。
27坪という限られた広さの中に、自分たちに必要な場所を丁寧につくることでした。


このSTEPでまず読んでほしい記事
27坪の家で実際に暮らして感じているメリットとデメリット、間取りの考え方をまとめています。
▶︎ 27坪の家は狭い?一級建築士が自邸で実感したメリット・デメリット
LDKの広さを考えるときに、畳数だけではなく、家具やキッチン、暮らし方から考える理由はこちらで紹介しています。
▶︎ 27坪のLDKは何畳必要?一級建築士が17畳の自邸で考えたこと
床面積を増やすのではなく、家の中にいくつかの居場所をつくった理由はこちらです。
▶︎ 27坪の家でも豊かに暮らせる|4つの居場所をつくった自邸の設計実例
「27坪では少し小さいかもしれない。30坪あれば何が変わるのか」と迷っている方へ、3坪の差を自邸の間取りから考えています。
▶︎ 27坪と30坪の家は何が違う?一級建築士が「3坪の差」を考える
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
間取りを見るときは、部屋数や畳数だけを確認するのではなく、
- 家族が一番長く過ごす場所はどこか
- 一人で落ち着ける場所は必要か
- 家の中から何が見えてほしいか
- 広くしたい場所はどこか
- コンパクトでも問題ない場所はどこか
を考えてみてください。
そして、できあがった間取りを見ながら、
「この家で、自分たちはどんな時間を過ごすのだろう。」
と一度想像してみてほしいと思います。
部屋の数や広さだけでは見えなかった、その間取りの良さや気になるところが見えてくることがあります。
次のSTEPでは、間取りだけでは分からない住み心地を支える、断熱・換気・暖房などの住宅性能と、予算とのバランスについて考えていきます。

〖STEP6〗住宅性能は、数字だけでなく暮らしとのバランスで考える


間取りが具体的になってくると、断熱や換気、暖房設備など、住宅性能についても考えることになります。
特に北海道では、冬をどのように快適に過ごすかは、家づくりの中でも大切な部分です。
ただ、住宅性能を調べ始めると、
「断熱等級はいくつが良いのか。」
「どの断熱材を使えば良いのか。」
「第一種換気と第三種換気はどちらが良いのか。」
と、数字や仕様の比較に目が向きやすくなります。
もちろん、性能を確認することは大切です。
一方で私は、
性能の数字を高くすること自体が、家づくりの目的ではない。
とも考えています。
自邸では、
- 断熱等性能等級6
- 一次エネルギー消費性能等級8
- BEI0.64
となっています。
ただ、私は最初から「断熱等級6の家をつくろう」と考えていたわけではありません。
これまでの設計経験から、札幌で冬も快適に暮らすためには、このくらいの断熱材の厚さや窓の性能にしておきたい、
というところから仕様を考えました。
壁や天井、基礎の断熱材の厚さ、窓、換気、暖房設備などを決め、その仕様で性能を計算した結果が、上記の数値です。
- 冬でも室温が安定しやすいこと
- お風呂上がりに寒さを感じにくいこと
- 朝起きたときに室内が冷えていないこと
- 暖房費をできるだけ抑えながら快適に暮らせること
そうした毎日の中で、「このくらいの性能にして良かった」と感じています。
とはいえ、自邸では性能だけに予算を集中させたわけではありません。
さらに断熱性能を高めたり、より高価な設備を採用したりすることもできました。
ただ、当然ながらその分だけ建築費は上がります。
家づくりの予算には限りがあります。
性能へ使うお金を増やせば、間取りや素材、坪庭、造作など、ほかに大切にしたい部分へ使える予算は少なくなります。
そこで私は、
自分たちの暮らしに必要だと思う性能を確保したうえで、家全体のバランスを取る。
という考え方を選びました。
また、住宅性能は断熱等級だけで決まるものでもありません。
断熱材、窓、気密、換気、暖房設備、そして実際の施工。
それぞれがきちんと計画され、施工されて初めて、暮らしの中で性能として感じられるものだと思います。
だからこそ、性能を検討するときは、
「何等級なのか」だけではなく、「その性能をどのようにつくっているのか」まで確認することが大切です。
これはSTEP4の住宅会社選びにもつながります。
性能の数字だけを見るのではなく、その数字を実際の建物でどう実現しているのかまで確認すると、住宅会社を見る基準も変わってきます。
このSTEPでまず読んでほしい記事
自邸で採用した断熱仕様と、札幌で実際に暮らして感じている住み心地をまとめています。
▶︎ 27坪の家は寒い?自邸で選んだ断熱仕様と実際の住み心地
性能を考えるときに、等級だけでは判断できない理由はこちらで詳しく紹介しています。
▶︎ 一級建築士が考える|断熱等級7でも快適とは限らない理由
実際に暮らしてからの暖房費はこちらで公開しています。
▶︎ 高性能住宅の暖房費は実際いくら?札幌・断熱等級6の自宅で冬のガス代を公開
第一種換気と第三種換気で迷っている方へ、自邸でダクトレス第一種換気を実際に使って感じたメリット・デメリットをまとめています。
▶︎ ダクトレス第一種機械換気のメリット・デメリット|札幌の実体験
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
住宅性能を考えるときは、まず「一番高い性能」を目指すのではなく、
- 冬をどのくらい快適に過ごしたいか
- 暖房費をどの程度抑えたいか
- 性能にどこまで予算を使えるか
- 性能以外にも大切にしたいものは何か
- 住宅会社がその性能をどのように実現しているか
を整理してみてください。
そのうえで、
「自分たちが快適に暮らすためには、どのような断熱・窓・換気などの仕様が必要なのか。」
を考えてみてほしいと思います。
性能値は、住宅を比較するための大切な目安です。
ただ、数字だけを目標にするのではなく、その先にある実際の暮らしが快適になるかどうかを考えることの方が、私は大切だと思っています。
次のSTEPでは、ここまで考えて建てた家が、実際に暮らしてみてどうだったのか。
良かったことだけでなく、住んでから分かった課題も含めて振り返ります。

〖STEP7〗家は、暮らして初めて分かることがある


家づくりは、完成したら終わりではありません。
図面を描いているときに想像していた暮らしが、本当に自分たちに合っていたのか。
それが分かるのは、実際に住み始めてからだと思います。
私も自邸を設計するときには、光の入り方や視線、動線、居場所、住宅性能など、できるだけ暮らしを想像しながら考えました。
それでも、実際に暮らしてみなければ分からなかったことがあります。
良かったと感じていることの一つが、坪庭です。
朝起きたときや、お風呂に入っているとき、家の中から緑が見えることは、設計時に想像していた以上に日々の暮らしに影響していました。
2階にLDKを設けたことも、今の暮らしには合っていたと感じています。
周囲からの視線を気にすることが少なく、日中はカーテンを閉めずに過ごせることも多くなりました。
また、延床約27坪というコンパクトな家だからこそ、家の中の移動距離が短く、掃除や管理がしやすいことも暮らしてから実感しています。
反対に、設計時には十分に想像できていなかったこともあります。
たとえば、寝室の真上に設けた書斎コーナーです。
間取りとしては納まっていましたが、夜に書斎を歩く音が寝室へ伝わることがあります。
図面の上では問題がなくても、
音の伝わり方や、家族それぞれが何時にどこで過ごすのか。
といったことは、暮らして初めて気づく部分もあります。
また、我が家は2階リビングです。
現在は階段の上り下りを負担に感じていませんし、2階にLDKを設けたメリットの方を大きく感じています。
ただ、これから年齢を重ねても今とまったく同じ暮らし方ができるとは考えていません。
家は何十年も使うものです。
今の暮らしだけではなく、
家族構成や年齢が変わったときに、この家をどう使えるか。
という視点も必要だと、改めて暮らしながら感じるようになりました。
こうした良かったことも、少し気になることも、自邸だからこそ正直に伝えたいと思っています。
家づくりの記事を読んでいると、「やって良かったこと」や「おすすめの間取り」がたくさん出てきます。
ただ、その人にとって良かったものが、そのまま自分たちにも合うとは限りません。
反対に、誰かが後悔した間取りでも、暮らし方によっては自分たちに合うこともあります。
だからこそ大切なのは、
良い・悪いだけで判断するのではなく、「自分たちならどう暮らすか」に置き換えて考えること。
だと思っています。
私自身、もしもう一度家を建てるとしても、単純に床面積を増やすことはしないと思います。
今回の家で良かった部分は残しながら、暮らして分かったことを次の設計に生かします。
家づくりに絶対の正解はありません。
だからこそ、完成した家を見るだけではなく、
その家で実際にどのような暮らしが続いているのか。
まで知ることが、自分たちの家づくりを考えるヒントになると思っています。
このSTEPでまず読んでほしい記事
実際に暮らしてみて、今でも「やって良かった」と感じている設計をまとめています。
2階リビングを実際に使って感じているメリットと、将来を含めた注意点はこちらで紹介しています。
▶︎ 27坪の2階リビングは後悔する?一級建築士が自邸で暮らして分かったこと
寝室の上に書斎をつくって分かった、コンパクトな家ならではの音の問題についてはこちらで詳しく書いています。
▶︎ 小さな家で後悔したこと|寝室の上に書斎をつくって分かった「音」の問題
コンパクトな家で、年齢を重ねても暮らしていけるのかを考えた記事です。
このSTEPを読んだ後に考えてほしいこと
完成した間取りを見ながら、一日の暮らしを少し具体的に想像してみてください。
- 朝起きてから、どこを通るか
- 家族がそれぞれどこで過ごすか
- 夜遅くまで使う場所はどこか
- 音が気になりそうな場所はないか
- 年齢や家族構成が変わっても使えそうか
そして、
「今、暮らしやすいか」だけではなく、「この家で長く暮らしていけそうか。」
という視点でも間取りを見てみてほしいと思います。
すべてを将来に備えて決める必要はありません。
ただ、今の暮らしと将来の暮らしの両方を少し想像しておくことで、家づくりの判断は変わることがあります。
まとめ|家づくりは、自分たちの基準をつくるところから
このページでは、私自身の27坪の家づくりを例にしながら、
- どんな暮らしをしたいのか
- 家づくり全体の予算をどう考えるか
- 土地をどう選ぶか
- 住宅会社をどう見るか
- 広さや間取りをどう考えるか
- 住宅性能をどう決めるか
- 実際に暮らしてみてどうだったか
という順番でご紹介しました。
家づくりについて調べていると、
「何坪あれば十分。」
「断熱等級はこのくらい必要。」
「この間取りがおすすめ。」
といった、さまざまな情報が出てきます。
もちろん、それらは家づくりを考えるうえで参考になります。
ただ、土地の条件も、予算も、家族構成も、暮らし方も人によって違います。
だから私は、誰かの正解をそのまま取り入れるのではなく、
自分たちは、どんな暮らしを大切にしたいのか。
という基準を持つことが大切だと思っています。
私自身も、「27坪の家を建てる」というところから家づくりを始めたわけではありません。
駅から近い場所で暮らしたい。
家の中から緑を感じたい。
冬でも快適に過ごしたい。
限られた予算の中でも、毎日の暮らしを少し豊かにしたい。
そうしたことを一つずつ考え、予算や土地、設計、住宅性能とのバランスを取っていった結果が、今の約27坪の住まいです。
実際に暮らしてみると、良かったこともあれば、「もう少し考えておけば良かった」と感じることもあります。
それも含めて、このサイトではこれからも自邸で感じたことを正直に紹介していきたいと思っています。
家づくりを始めたばかりで、まだ何も決まっていなくても大丈夫です。
まずは、
「自分たちは、どんな暮らしをしたいのだろう。」
というところから考えてみてください。
そこが見えてくると、予算や土地、住宅会社、間取りを選ぶときにも、自分たちなりの判断基準が少しずつできてくると思います。

