27坪の家は寒い?一級建築士が自邸で選んだ断熱仕様と実際の住み心地
27坪の敷地に自邸を設計・建築しました。
一級建築士として設計し、施主として実際に暮らしている経験をもとに、家づくりについて発信しています。

「27坪のようなコンパクトな家は、冬に寒くないのか。」
このような疑問を持つ方もいると思います。
ただ、家が小さいことと、寒いことは直接結びつきません。
むしろ私は、自邸を設計しているとき、
暖房する空間がコンパクトな分、家全体を暖めやすいのではないか
と考えていました。
もちろん、家を小さくすれば暖かくなるという意味ではありません。
断熱、気密、窓、換気、暖房設備、日射取得などを住宅全体で考える必要があります。
実際、自邸では特殊な断熱工法を採用したわけではありません。
それでも、冬に外気温が−10℃を下回ることのある札幌で、寒さを我慢せずに暮らせています。
今回は、
- 自邸で採用した断熱仕様
- なぜ断熱等級6を目標にしなかったのか
- 窓に予算をかけた理由
- 実際に冬を過ごして感じた暖かさ
- もう一度建てるなら仕様を変えるのか
についてお話しします。
断熱等級6を目指したわけではありません

まずお伝えしたいのは、私は最初から「断熱等級6を目指そう」と考えて設計したわけではありません。
私が考えたのは、
「この仕様なら十分な性能になる」
ということでした。
採用した仕様は次のとおりです。
- 基礎:スタイロフォーム100mm(熱伝導率0.028W/(m・K))
- 壁:高性能グラスウール16K(熱伝導率0.038W/(m・K))105mm
- 屋根:セルローズファイバー330mm(熱伝導率0.040W/(m・K))
設計がまとまり、性能計算をした結果が断熱等級6だった、ということだけです。
仮に断熱等級5という結果だったとしても、断熱材を厚くしたり、仕様を変更したりするつもりはありませんでした。

それくらい、採用した仕様に納得していました。
性能値は住宅を比較するうえで便利です。
ただ、数字を上げること自体が家づくりの目的になってしまわないことも大切だと思っています。
我が家で壁に高性能グラスウールを採用した理由については、別の記事で詳しくご紹介しています。
断熱材だけでなく、窓にも予算をかけた
断熱性能を考えるとき、断熱材の厚さに目が向きがちです。
ただ、住宅の熱の出入りを考えるうえでは、窓も重要です。
自邸では、基本的に樹脂サッシのトリプルガラスを採用しました。
さらに、坪庭を見るための窓には木製のトリプルガラス窓を使っています。
毎日見る坪庭を、できるだけきれいに見せたかったからです。
食事をしながら木々を眺めたり、季節の変化を感じたりする。
自邸では、この景色を暮らしの中で大切にしたいと考えていました。


もちろん性能についても考えています。
ただ、
「性能のためだけにお金を使った」のではなく、「暮らしの質と性能の両方に意味があるものへ使った」
という感覚の方が近いです。
これは自邸全体の予算配分でも意識したことです。
とにかく暖かい|実際に暮らして感じたこと
実際に冬を迎えて最初に感じたのは、
「暖かい。」
というとてもシンプルな感想でした。
アパートで暮らしていた頃とはまったく違い、妻も暖かさに驚いていました。
- 朝起きても暖かい
- 夜トイレに立つ時も暖かい
- そのトイレも暖かい
- お風呂上がりも寒く感じない
暖かい家はこんなにも快適なものか、と実感しました。
我が家に来た友人や知人からも、
「暖かい家」
と言う声ばかりで、中には他社で高性能住宅を建てた方からも、そう言われることもあります。
もちろん、これは断熱材だけのおかげではありません。
窓や暖房計画、設計全体が組み合わさって、この住み心地につながっていると感じています。
氷点下の冬でも、室内は安定して暖かく極端な温度ムラやコールドドラフトは感じません。
自邸はコンパクトな大きさということもあり、暖房の熱が家全体にまわりやすいと感じています。
夏も極端に暑くなることはありません。
札幌の夜は涼しいことが多く、ちょっと窓を開けて外気を入れるだけで家全体が涼しくなります。
それでも暑ければ、冷房を入れればすぐ快適になります。
断熱性能は冬だけではなく、夏の快適性にも大きく影響していることを実感しています。
27坪に住んで感じたメリットやデメリットは、こちらの記事で詳しく紹介しています。
暖かさは断熱材だけで決まらない
ただし、
この暖かさが断熱等級6だけによるものだとは考えていません。
自邸では、
- 断熱性能
- 気密性能
- トリプルガラス
- 温水セントラル暖房
- 第一種熱交換換気
- 冬の日射取得
- 延床約27坪というコンパクトな床面積
などを組み合わせて計画しています。
断熱材を厚くすれば、それだけで快適な家になるわけではありません。
窓の位置や大きさ、暖房方式、換気、日射まで含めて考えることが大切です。
実際に自邸でかかった冬のガス代や、なぜ比較的暖房負荷を抑えられていると考えているのかは、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
27坪だから暖かいのか
延床約27坪という大きさも、冬の暮らしには関係していると感じています。
住宅がコンパクトであれば、当然、暖房する空間も小さくなります。
自邸では部屋同士の距離も短く、家全体に暖房の熱がまわりやすいと感じています。
ただし、
「小さな家=暖かい」ではありません。
断熱性能が低かったり、窓から多くの熱が逃げたりすれば、コンパクトな住宅でも寒くなります。
反対に、大きな住宅でも適切に断熱・暖房計画を行えば快適に暮らせます。
つまり27坪という大きさは、暖房する空間を抑えやすい一つの要素ではありますが、住宅性能そのものを決めるものではありません。
27坪の自邸で実際に暮らして感じたメリットとデメリットについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
夏に暮らして感じたこと
断熱性能は冬だけに関係するものではありません。
夏も、外の熱が室内へ伝わりにくくなるという点ではメリットがあります。
自邸で暮らしていても、室温が急激に変化しにくいと感じています。
ただし、夏の快適性については断熱性能だけでは決まりません。
窓から入る日射や、窓の方位、日射遮蔽、風の通り方なども大きく関係します。
札幌では夜に外気温が下がる日もあり、そのような日は窓を開けて外気を取り入れることがあります。
それでも暑い日は、無理をせず冷房を使っています。
高断熱の家だから、夏に冷房がいらない。
ということではありません。
冬と同じように、断熱だけではなく、日射や設備まで含めて考えることが大切だと思います。

実際に住んで分かったこと|暖房を止めるとタイル床は冷たい
自邸では、タイルを貼った床の一部に床暖房配管を入れています。
冬の暖房中はとても快適です。
ただ、春や秋になって暖房を止めると、タイルは少し冷たく感じます。
これは住宅の断熱性能というより、タイルという仕上げ材の性質による部分が大きいと思っています。
家の中は十分暖かい。
でも、足の裏で触れるタイルは少し冷たい。
だからといって、このためだけに暖房を動かすのも違うと思っています。
この程度であれば、私は受け入れられます。
こうした感覚は、性能計算の数字を見ているだけでは分からなかったことです。
今もう一度建てても、この断熱仕様を選ぶ
もし今もう一度同じ家を建てるとしても、断熱仕様は変えません。
もっと断熱材を厚くすることもできます。
ですが、壁を厚くすれば納まりは複雑になりますし、天井を厚くすれば天井高さにも影響します。
当然コストも上がります。
これ以上断熱仕様を上げることのメリットよりも、予算の都合で出来ないが増えてしまうことが大きなデメリットと感じます。
私は現在の仕様で十分な性能と快適性を得られていると感じています。
だからこそ断熱材を増やすことよりも、住宅全体のバランスを大切にしたいと考えています。
まとめ|断熱等級ではなく、その先の暮らしを見る
自邸は、断熱等級6・UA値0.28です。
ただし、それを最初から目標にしていたわけではありません。
札幌で快適に暮らすために必要だと思う断熱材や窓などを選び、計算した結果が断熱等級6でした。
そして実際に暮らしてみると、
- 朝起きたとき
- 夜トイレへ行くとき
- お風呂から上がったとき
- 外から帰宅したとき
など、日常のいろいろな場面で暖かさを実感しています。
断熱性能を高めることには意味があります。
ただ、等級やUA値の数字を上げること自体が目的ではありません。
その性能によって、どんな暮らしができるのか。
私はそこを見ることの方が大切だと思っています。
断熱性能を考えるときは、
「等級6と7、どちらがいいのか。」
だけではなく、
- 冬にどのくらい暖かく暮らしたいか
- 水まわりの温度差をどこまで減らしたいか
- 窓からどんな景色を見たいか
- 性能にどこまで予算を使えるか
- 性能以外にお金を使いたい場所はあるか
も考えてみてください。
そのうえで、
「自分たちが納得できる性能と価格のバランスはどこなのか。」
を考えることが大切だと思います。
性能を高くすること自体を目的にするのではなく、自分たちが送りたい暮らしから必要な性能を考えてみてください。
土地・予算・間取り・性能を含めて、家づくり全体の考え方を順番に整理した記事はこちらです。

