一級建築士が考える|断熱等級7でも快適とは限らない理由
私は「断熱等級7だから安心」とは思っていません。
もちろん、断熱性能が高いことには大きなメリットがあります。
ただ、家づくりで本当に見てほしいのは、
「何等級なのか」だけではなく、その性能をどう設計し、どう現場でつくるのか。
というところです。

近年は、断熱等級6・7やHEAT20 G2・G3など、高性能住宅を示す数値を見る機会が増えました。
もちろん、高い断熱性能を目指すこと自体は決して悪いことではありません。
ただその一方で、
「数字が高いほど良い家」
という見方だけになってしまうのは、私としては少し違うと思っています。
私はこれまで、住宅の営業・設計・施工管理に携わり、自分自身でも自邸を設計して暮らしてきました。
その経験から感じているのは、
住宅の快適性は、断熱等級だけでは決まらない
ということです。
この記事では、
- 断熱等級で分かること
- 断熱等級だけでは分からないこと
- 設計で考えたいこと
- 施工品質が大切な理由
- 性能と暮らしのバランス
についてお話しします。
断熱等級は「設計上の性能」です
断熱等級は設計段階で決まる性能値です。
使用する断熱材の種類や厚み、窓や玄関ドアなどの性能を入力し、建物の外皮面積から計算して求められます。
つまり、
「このように建てられれば、この性能になります」という計算結果です。
同じ材料を使っても外皮面積が異なれば、数値は変わります。
同じ数の窓を使っても、配置する方位によっても数値は変わります。
そして1番のポイントが、この数値が算出されるとき、まだ建物は完成していません。
つまり、現場でどう施工されるかまでは反映されていません。
そのため断熱等級が高いことと、「実際に快適な家」であることは、必ずしもイコールではありません。
快適な家は断熱等級だけでは決まらない
家で暮らす人が求めているのは、断熱等級という数字ではありません。
- 冬でも暖かいこと
- 夏でも涼しいこと
- 光熱費が抑えられること
- 部屋ごとの温度差が少ないこと
こうした実際の暮らしやすさだと思います。
例えば、断熱等級7でも日射取得がうまくできていなければ、冬は暖房に頼る時間が長くなります。
夏も同じです。
西日が強く入る大きな窓があり、日射遮蔽が十分でなければ、室温が上がりやすくなります。
つまり、住宅の快適性を考えるときは、
- 断熱
- 気密
- 窓の位置と大きさ
- 日射取得
- 日射遮蔽
- 換気
- 暖房・冷房計画
- 間取り
まで含めて考える必要があります。
断熱性能が高いことと、その性能を上手に活かせることは別の話です。
私自身も、断熱等級6の自邸で暮らしています。
ただ、最初から「等級6にしよう」と考えたわけではありません。
札幌で快適に暮らすために必要だと思う仕様を選び、計算した結果が断熱等級6でした。
自邸で採用した具体的な断熱仕様と、実際に冬を過ごして感じたことについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
断熱等級7を優先することで、ほかの選択肢が狭くなることもある
お客様から、
「断熱等級7にした方がいいですか?」
と聞かれることがあります。
そのとき私は、
「まず、この家で何を大切にしたいかを考えましょう。」
とお話しします。
断熱等級7を目指すこと自体は、まったく悪いことではありません。
予算や間取りとのバランスが取れるのであれば、高い断熱性能は大きなメリットになります。
ただし、住宅には使える予算があります。
性能を上げるために費用を使えば、その分、
- 土地
- 間取り
- 窓
- 素材
- 設備
- 庭や外部空間
などに使える予算が少なくなることもあります。
その結果、本当にやりたかった暮らしを諦めてしまっては本末転倒です。
家づくりは断熱等級を競うために行うものではなく、自分たちが心地よく暮らすために行うものです。
私は断熱等級7を否定しているわけではありません。
ただ断熱等級7を優先した結果、本当にやりたかったことを諦めるのであれば、一度立ち止まって考えてほしいと思っています。
断熱等級7を否定しているわけではありません。
予算に余裕があり、暮らしとのバランスも取れるなら、高い性能を選ぶことには大きなメリットがあります。
ただ、その数字を達成すること自体が家づくりの目的になってしまわないようにしてほしいと思っています。

高い性能を設計で活かすことが大切
例えば、自邸では冬の日射を取り込むことも意識しました。
断熱性能を高めて、暖めた熱を逃がしにくくする。
そのうえで、冬の日差しを室内へ取り込み、暖房が補う熱を少なくする。
こうした考え方です。
反対に夏は、必要以上に日射を室内へ入れないことを考える必要があります。
つまり、
「断熱性能を高くすること」
「その性能を活かす設計をすること」
はセットで考えた方がよいと思っています。
これは換気や暖房設備についても同じです。
設備単体の性能だけを見るのではなく、住宅全体の中でどう働くのかを考えることが大切です。
もう一つ大切なのが施工品質です
そして、設計と同じくらい大切なのが現場です。
どれだけ高い性能で設計しても、それが現場で適切に施工されなければ、設計時に想定した性能を十分に発揮できない可能性があります。
例えば、
- 断熱材が適切に施工されているか
- 気流止めや気密処理が適切か
- 防湿層が適切に連続しているか
- 窓まわりなどが丁寧に施工されているか
といった部分です。
こうした施工の積み重ねによって、本来発揮できるはずの性能は変わってしまいます。
私は100棟以上の住宅づくりに携わってきましたが、住宅性能は図面だけでは完成しないと強く感じています。
設計した内容を現場でどう再現するのか。
そしてその状態をどのように確認するのか。
ここまで含めて住宅性能だと思っています。
例えば、
「グラスウールはやめた方がいい。」
と言われることがあります。
ですが私は、グラスウールそのものが悪い断熱材だとは思っていません。
自邸でも高性能グラスウールを採用しています。
大切なのは、
どの断熱材を使うかだけではなく、その材料に合った設計と施工がされているか
ということです。
自邸でグラスウールを採用した理由については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
数値だけでは見えないもの
最近では高断熱・高気密を強みにする住宅会社も増えました。
もちろんそれ自体は良いことです。
ですが、家づくりでは性能値だけを見るのではなく、
- なぜこの設計なのか
- 日射取得や日射遮蔽まで考えられているか
- 現場で性能を再現する仕組みがあるか
こうした点まで確認してほしいと思います。あ
私なら「等級7です」という説明だけより、
「なぜこの仕様にしているのか」まで説明してもらえる方が安心できます。

数値の高さだけではなく、その数値に至った理由を説明できるかどうか。
そこに、住宅会社の考え方や設計・施工への姿勢が表れると思っています。
住宅会社を選ぶときも、性能値だけではなく、「その性能をどのようにつくっているのか」を見ることが大切だと思っています。
私が住宅会社を見るときに、性能の数字以外で確認していることはこちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ|「何等級か」だけで家を選ばない
断熱等級は、住宅性能を判断するうえで大切な指標です。
性能が高くなれば、室内の熱を逃がしにくくなるというメリットがあります。
ただし、
断熱等級だけで、実際の家の快適性まで決まるわけではありません。
住宅には、
- 断熱
- 気密
- 窓
- 日射
- 換気
- 暖冷房
- 間取り
- 施工品質
など、さまざまな要素が関係しています。
だから私は、
「断熱等級7だから安心」ではなく、「なぜこの性能なのか」まで見てほしい
と思っています。
家づくりの目的は、性能の数字を競うことではありません。
その家で家族が快適に暮らすことです。
性能値はそのための大切な判断材料の一つ。
そのくらいの距離感で見るのが、ちょうどよいと思っています。
住宅会社から断熱性能の説明を受けたときは、
「等級はいくつですか。」
だけで終わらず、
- なぜその断熱仕様なのか
- その地域ではどこまで性能が必要なのか
- 窓や日射まで含めて考えているか
- 気密や施工品質をどう確認しているか
- 性能を上げるために、何に費用がかかっているのか
まで一度聞いてみてください。
そして、
「一番性能が高い家」ではなく、「自分たちが納得できる性能と暮らしのバランスはどこなのか。」
を考えてみてほしいと思います。
土地・予算・間取り・性能を含めて、家づくり全体の考え方を順番に整理した記事はこちらです。

