27坪の間取りで暮らす|コンパクトな家で見えたメリット・デメリット
「広い家が良い」
そう考える人は多いと思います。
しかし住宅価格が上がり続ける今、広さを優先すると性能や素材、空間の質を妥協せざるを得ないケースが増えています。
私はその逆を選びました。
延床27坪というコンパクトな家にして、その分を性能と暮らしの質を高める計画にしました。
実際に住んでみると、想像していたよりもずっと快適です。
この記事では、27坪の敷地面積に床面積27坪の自邸を建てた経験をもとに、
- コンパクトな家の設計意図
- 実際に暮らして感じたメリット・デメリット
を、建築士と施主の視点で解説していきます。
広ければ広いほど仕上げる面積が増え、使用する材料も自ずと増えることになります。当然それはダイレクトに価格に反映されます。
住宅価格が上がり続ける今、この“広さありき”の考え方を一度見直す必要があると感じています。
広さを求めて計画を進めていくと、想像以上の費用になり、そこから規模を縮小して調整するケースが多く見受けられます。
その結果、最初に思い描いていた家とのギャップに、家づくりの満足度が下がっています。
そんな場面を何度も見てきました。
冒頭でご紹介したように私は27坪のコンパクトな家を設計しました。
ー 実際に暮らしてみてどうだったか ー
妻には前もって「住んだら狭いって言うと思うよ」と伝えていました。
しかし実際に住んでみると、私も妻も「ちょうど良い広さ」と感じています。
広くはありません。
ただ、不満もありません。
むしろ暮らしやすさという点では想像以上でした。
コンパクトに建てることが、あなたの家づくりの選択肢の一つになるかもしれません。
面積を削った代わりに、質を高めた部分についてこちらの記事で詳しく紹介しています。

27坪が成立する大前提|3人家族以下

少人数世帯|夫婦 or 夫婦+子1人
まず小さな家を計画するにあたり「大前提」があります。これを外すと後悔すると思います。
それは少人数世帯であること。
- 夫婦2人
- 夫婦+子ども1人
このくらいの世帯がちょうど良いのだと思います。
家族構成が多ければ自ずと家は大きくなります。
我が家は妻と2人暮らしで、来客用や今後の家族構成の変化を考慮して2LDKで計画しています。
出生率が減少している今、
家の広さも“前提”から見直す必要があるのかもしれません。

平面図の全体像
我が家の基本設計図がこちらです。
1階平面図
まずは1階から。

1階はガレージ・エントランス・シューズクローク・寝室・トイレ・お風呂・ランドリー。
坪庭を角に配置して、浴室・寝室から愉しめる計画にしています。
2階平面図
次は2階です。

坪庭上部が吹き抜けになっていて、ダイニングとリビング続きのルーフテラスと繋がる計画にしています。
コンパクトな面積の中でも、閉塞感を感じにくい計画を意識しました。
空間構成|立面図・断面イメージ
立面と断面イメージ、空間構成はこんな感じです。

この家は「坪庭を中心に、各空間がゆるやかにつながる構成」としています。
住む前から楽しい暮らしが想像でき、住んでからは想像以上に楽しい暮らしになっています。




この間取りで意識した3つのポイント
簡単にまとめると以下3点です。
- 坪庭を中心にした”抜け”のある空間構成
- 2階LDKで光とプライバシーを確保
- できるだけ居場所を作る
ポイント①|坪庭を中心にした“抜け”のある空間構成

限られた敷地でも広がりを感じられるように、坪庭を中心に配置しています。
「狭小地+坪庭」これが我が家の計画の根幹になっているところで、この土地での計画がスタートした当初から、どこに坪庭を計画しようかを常に考えて計画していました。

周囲が住宅に囲まれているからこそ、敷地内に坪庭という自分の敷地の中に“内側の外部”をつくることで、視線の抜けを生み出し、実際の面積以上にゆとりを感じられるような計画です。
これが我が家の最も大きなポイントになっています。
坪庭は外壁とルーバーで囲い込み、周囲からの視線を遮ることで、
家族だけが楽しめるプライベートな屋外空間としました。

視線の抜けについてこちらの記事で詳しく紹介しています。
ポイント②|2階LDKで光とプライバシーを確保

1階部分に計画する必要のある、ガレージ・エントランス・シューズクローク・・・
ここにLDKを配置すると、かなり狭いLDKになってしまいます。
また「周囲が家」という、狭小地によくありがちな敷地で、1階では十分な採光確保が難しくなります。
そんな理由もあって我が家のLDKは2階に配置し「採光確保」と、できるだけ「圧迫感を排除」しています。
それと商業地域という用途地域から、隣同士の建物はかなり近接していますので、外からの視線を気にせず過ごせる点も2階LDKのポイントにもなっています。
民法234条では
「建築物の築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければいけない」
言い換えると、境界線まで50cmまで近づけることができ、我が家も含め隣家はかなり近接して建築しています。

2階リビングはデメリットもありますが、狭小地ではメリットの方が大きいと感じています。そのあたりを詳しくご紹介しています。
ポイント③|できるだけ居場所をつくる

「できるだけ居場所をつくる」ということを意識して設計しました。
居場所というのは、単にリビングのような広い空間だけではなく、なんとなく座れる場所や、一人で落ち着ける場所のことです。
家の中にこうした小さな居場所が点在していることで、その時の気分や家族との距離感に応じて、自然と過ごし方を選べるようになります。
実際の暮らしの中では、常に家族と同じ空間にいるわけではありません。
- 少し一人で考えごとをしたいとき
- なんとなくスマホを見たいとき
- 家族の気配は感じつつも、少し距離を取りたいとき
こうした場面は意外と多く、リビングだけでは受け止めきれないと感じています。
そのため、目的を限定しすぎない「余白のある場所」をあえてつくることを意識しています。



妻の籠り部屋で、プロジェクターを壁に投影して映画や野球観戦をして楽しんでいます。

居場所をつくることは別記事で詳しくご紹介しています。
この家のメリット
- 坪庭によって、面積以上の広がりと心地よさを感じられる
- 建物にコストをかけやすく、空間の質を高められる
- コンパクトだから成立する動線と暮らし
- 1階で生活が完結でき、将来にも対応しやすい
- 光熱費を抑えやすい
坪庭によって、面積以上の広がりと心地よさを感じられる
狙い通り、坪庭に面する諸室がとても快適な空間になりました。
坪庭を眺めながらお風呂に浸かり、寝る前に坪庭を眺めながら就寝前に夫婦の談笑時間。


ダイニング・リビングから坪庭空間を見下ろしたり、空間の抜けがあったり。

これによって、実際の床面積以上に広がりを感じやすくなります。
リビングからだけでなく、寝室や浴室からも外部の気配を感じられるため、「囲まれている感覚」が少なく、心理的なゆとりにつながります。
単に広い空間をつくるのではなく、どう広く感じるかを意識した設計です。
ダイニングは6畳ほどのスペースですが、坪庭側に奥行きがあり、畳数以上の広さを感じます。

玄関ドアを開けて真っ直ぐに伸びる廊下の先にも坪庭があります。

廊下に奥行きが出て、実際の廊下の長さ以上に奥行き感のある廊下になりました。

建物にコストをかけやすく、空間の質を高められる
建物の面積を抑えたことで、その分のコストを空間の質に回すことができます。
例えば、浴室のハーフユニット+板張りや、素材感にこだわった内装など、日常の中で「少し気分が上がる」要素にしっかり充てることできました。

広さを優先すると削られがちな部分ですが、コンパクトにすることで逆に強化できるポイントです。
賃貸暮らしでは、妻はシャワーで済ますことがほとんどでしたが、今ではほぼ毎日浴槽に浸かっています。
私はもともとお風呂好きで、ここに住んでから1日4回入浴することもあるくらい快適な空間です。
朝・昼・夕方・夜、と時間毎に様子が変わる坪庭を眺めながら入るお風呂を楽しんでいます。

面積を削った代わりに、質を高めた部分についてこちらの記事で詳しく紹介しています。
コンパクトだからこそ成立する動線と暮らし
面積が小さい分、移動距離は自然と短くなります。
さらに、1階に寝室と水廻りを集約することで、将来的にも暮らしやすい構成としました。
日常の動きがシンプルになり、無駄のない暮らしにつながります。
1階で生活が完結でき、将来にも対応しやすい

寝室と水回りを1階に配置することで、生活の大部分をワンフロアで完結できます。
将来的に階段の上り下りが負担になった場合でも、無理なく暮らし続けることができますし、親との同居や介護といった変化にも対応しやすい構成です。
今だけでなく、将来の暮らしも見据えた計画になっています。
光熱費を抑えやすい
コンパクトな家は、冷暖房の効率が良くなります。
暖める(冷やす)空間が小さいため、エネルギー消費を抑えやすいからです。
当然ながら、家の容積は冷暖房する空間と等しくなるので光熱費に影響することとなります。
特に寒冷地では、この差がランニングコストに直結します。
住み始めてからじわじわ効いてくる、“見えにくいメリット”の一つです。
こちらの記事では我が家の暖房費を公開しています。
それに加え、我が家の換気は一種換気(全熱交換器)を使用しています。
以前に建てたオーナー宅と比較して、暖房費は5,000円/月ほど安くなっている印象です。

熱交換換気を採用しているので、さらに光熱費(暖房費)を抑えることができています。
我が家はPanasonicのダクトレス熱交換器「IAQ-V」を採用しています。こちらでメリット・デメリットを詳しく解説しています。
正直に感じているデメリット
次に暮らしてみてのデメリットです。
- 周辺環境の影響で、午後の日当たりは決して良いとは言えない
- 将来的な間取り変更などの可変性は高くない
- 外部空間の使い方が限定される
周辺環境の影響で、午後の日当たりは決して良いとは言えない
我が家の敷地は商業地域で、周囲に建物が建つ可能性も高く、1階での十分な採光は難しい条件です。
そのため2階にLDKを配置していますが、それでも時間帯や周辺環境によっては、光の入り方に制約を感じる可能性があります。
お昼を過ぎると間接光での採光になりますが、やはり直射日光と比べると明るさは落ちてしまいます。

この計画は「日当たりの良さを最大化する家」というよりも、限られた条件の中でどう快適性を確保するか、という考え方に寄せています。

将来的な間取り変更などの可変性は高くない
2LDK+DENという構成上、将来的に部屋数を増やすといった柔軟な変更はしにくい計画です。
例えば子どもが増えた場合や、ライフスタイルが大きく変わった場合には、間取りの変更で対応するというよりは、「使い方で工夫する」必要が出てきます。
ある程度、暮らし方の方向性を決めた上で成立する間取りです。
お子さんを2人以上考えているご家庭では、狭小地は難しくなってしまうかもしれません。

外部空間の使い方が限定される。

敷地に余裕がないため、いわゆる庭として自由に使えるスペースは多くありません。
家庭菜園や子どもの遊び場など、広い外部空間を前提とした暮らしには向いていない計画です。
坪庭によって視覚的な豊かさは確保していますが、“使う庭”というよりは“眺める庭”に近い位置付けになります。
どれもデメリットですが、考え方次第では“優先順位の結果”とも言えます。

この家が向いている人・向かない人
向いている人
- コストと性能のバランスを重視したい方
- コンパクトでも快適に暮らしたい方
- 空間の“質”に価値を感じる方
向かない人
- とにかく広さに安心感を求める方
- 3LDK以上必要と感じる方
- 庭や家庭菜園など、敷地の余裕を重視したい方
まとめ|広さよりも“質”という選択
広さを求めるほどコストは上がり、どこかで質を調整せざるを得なくなります。
だからこそ発想を逆にして、
建物をコンパクトにして、その分だけ性能や快適性にコストをかける。
というのが良いのではないかと思っています。
この家では、
- 居場所を分散させること
- 坪庭によって視線の抜けをつくること
- 2階にLDKを配置し、光とプライバシーを確保すること
といった考え方をもとに計画しました。
いずれも「広さを確保する」というよりは、空間の感じ方や、過ごし方の質を高めるための工夫です。
実際に住んでみると、面積以上の広がりを感じられることや、家族それぞれが無理のない距離感で過ごせることなど、日々の暮らしの中でその効果を実感しています。
一方で坪庭による面積の制約や、2階LDKによる動線の課題など、トレードオフとなる部分もありました。
家づくりでは、すべてを満たす“正解”があるわけではなく、何を優先し、何を受け入れるかを考えることが重要だと感じています。
これから計画される方は、単に広さや間取りの形だけでなく、
「その空間でどのように過ごしたいか」
「どんな距離感で暮らしたいか」
といった視点から、間取りを考えてみてください。
それが、住宅価格が上がり続ける今の時代に合った、現実的な選択肢の一つではないかと考えています。
少しでも参考になれば幸いです。


