条件が悪い土地は本当にダメ?一級建築士が27坪の土地を選んだ理由
「理想の土地が見つからない。」
家づくりを考え始めると、多くの方が最初に悩むことではないでしょうか。
- 南向き
- 広い
- 整形地
- 前面道路が広い
- 日当たりが良い
- 駅から近い
と、少しずつ条件が増えていきます。
もちろん、条件の良い土地を選べるなら、それに越したことはありません。
ただ、すべてを求めれば土地価格は高くなります。
そして土地へ予算を使えば、その分、建物に使える予算は少なくなります。
だから私は、
「良い土地を探す」より、「自分たちの暮らしに合う土地を探す」
という考え方の方が大切だと思っています。
この記事では、
- なぜ27坪の土地を選んだのか
- 土地を買う前に何を確認したのか
- 小さい土地をどう設計で活かしたのか
- 実際に暮らして感じたメリット・デメリット
- 土地探しで私が大切だと思うこと
を、自邸の実例をもとにお話しします。
る予算は少なくなってしまいます。
私が自邸を建てたのは約27坪の敷地です。
位置指定道路で、隣家との距離も近い土地です。
不動産会社の方からは、「駅近なので問い合わせは多かったけれど、約2年間売れなかった土地でした」と聞きました。
それでも私は、この土地を選びました。
今回は、その理由と、実際に暮らして感じていることをお話ししたいと思います。
駅近なのに、約2年間売れなかった土地
土地探しを始めてから、およそ1か月。
アプリを使いながら、毎日のように土地を探していました。
実は最初、この土地とは別の土地を購入する予定でした。
ところが申し込み直前、第一希望だった土地を扱う不動産会社から連絡がありました。
一番手だった方が諸事情で購入ができなくなり、私に購入の順番が回ってきたのです。
第一希望の土地は駅から近く、決して人気がないエリアではありません。
問い合わせも多く、積極的に検討した方も4組ほどいたそうです。
それでも契約には至らず、約2年間売れ残っていました。
約27坪という土地の小ささだったのではないかと思っています。
実際に見ても「小さい土地だな」と思った

敷地面積27坪。
数字で見ても小さいですが、現地で見るとやはり小さく感じました。
隣家との距離も近い。
日当たりも、それほど良さそうには見えない。
道路も位置指定道路です。
土地だけを見れば、
「もっと条件の良い土地を探した方がいいのでは。」
と思う人も多いと思います。
私自身も、
「条件の厳しい土地だな。」
と思ったのが正直なところです。
大きな不安がなかったのは、購入する前に家のプランを考えていたからです。
土地を買う前に、実際にプランを描いた
私は、この土地を購入する前に簡単なプランを描きました。
その時のラフプランがこちらです。

この段階ではまだ簡単なスケッチでした。
それでも、
- 必要な部屋が入るか
- 駐車スペースを確保できるか
- 光をどこから入れるか
- 隣家からの視線をどう避けるか
- どこに外部空間をつくるか
を考えることはできました。
その結果、
「この土地なら、自分たちがしたい暮らしは十分できる。」
と思えました。
私は、土地を買うときに坪数だけを見るのではなく、
その土地に必要な家が成立するか
を確認することがとても大切だと思っています。
このラフプランをもとに実際に完成した我が家はこちらの記事で紹介しています。
「土地」ではなく「そこでの暮らし」を考えた
隣家との距離が近いことは、購入前から分かっていました。
だから、外へ大きく開く庭をつくるのではなく、
家の内側に坪庭をつくる
という方向で考えました。
道路や隣家へ視線を抜くのではなく、坪庭へ視線を抜く。
外から見られないようにカーテンを閉めるのではなく、室内から緑を見ながら暮らせるようにする。
土地のデメリットをなくしたわけではありません。
そのデメリットが暮らしの中で気になりにくくなるように設計した
という方が近いと思います。
この時に考えた、
「視線をどこへ抜くか」
「光をどこから取り込むか」
という考え方は、完成した家でもほとんど変わっていません。
坪庭を使って視線の抜けをつくった考え方については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
設計に携わっていなければ、この土地は選ばなかったと思う
正直に言うと、
もし私が住宅設計に携わっていなければ、この土地は買っていなかったと思います。
27坪という数字だけを見て、
「小さすぎる。」
と判断していたかもしれません。
あるいは現地を見て、
「隣の家が近い。」
「日当たりが悪そう。」
と候補から外していた可能性もあります。
土地は、完成した商品ではありません。
その土地に家が建ち、そこで生活が始まって初めて、本当の使い方が決まります。
だからこそ、
土地単体の条件だけで、その土地の価値を判断するのは難しい
と思っています。
土地価格だけでなく、家づくり全体の予算で考える
この土地を選んだ理由には、予算もあります。
土地に多くの予算を使えば、その分だけ建物に使える金額は減ります。
反対に、土地価格を抑えることができれば、
- 住宅性能
- 窓
- 内装
- 造作家具
- 水まわり
- 庭や外部空間
などへ予算を使うこともできます。
私自身も、土地をコンパクトにしたことで、建物側で大切にしたい部分へ予算を使うことができました。
例えば、造作のお風呂です。



土地を広くすることより、
家の中で毎日体験するものへ予算を使う
という判断をしました。
もちろん、これは私たち夫婦の優先順位です。
広い庭が欲しい方であれば、土地へ予算を使う方が満足度は高いと思います。
大切なのは、
土地と建物を、それぞれ「別なもの」として考えないこと
だと思っています。
家づくり全体の予算をどのような順番で考えたのかについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
実際に暮らして、この土地で良かったと思っている
暮らし始めてから感じる満足感は、想像していた以上でした。
坪庭は家のどこにいても気配を感じられ、隣家が近いことを忘れるくらい落ち着いた空間になりました。
土地の価格を抑えられたことで、その分建物にも予算をかけることができました。
アパートで暮らしていた頃にはなかった、「家で過ごす時間そのものが豊かになる」という感覚があります。
自邸に住んでから、生活の質(QOL)が上がったことを、日々の暮らしで実感しています。

もちろん、不便なこともあります
一方で、
「この土地の条件は良くないな。」
と感じる場面もあります。
例えば前面道路。
道路幅に余裕がないため、車庫入れでは切り返しが必要になる場合があります。
今は向かい側が空地なので比較的出し入れしやすいですが、将来そこに建物が建てば、今より気を使う可能性もあります。
ただ、この点は購入前からある程度想定していました。
だから、
住んでから初めて知ったデメリットではありません。
デメリットを理解したうえで、それ以上に駅から近いことや、予算とのバランスを優先した。
そう考えているので、今のところ後悔はありません。
土地探しでは「デメリットがあるか」ではなく「受け入れられるか」を考える
完全にデメリットのない土地は、なかなかありません。
日当たりは良いけれど駅から遠い。
駅から近いけれど土地が小さい。
広いけれど価格が高い。
価格は安いけれど道路条件が良くない。
何かを得れば、何かを諦めることになる場合もあります。
だから私は、
「この土地にデメリットはありますか?」
だけではなく、
「そのデメリットを理解したうえで、自分たちは受け入れられるか。」
を考える方が現実的だと思っています。
さらに、
「設計によって、そのデメリットを暮らしの中で小さくできないか。」
まで考えられると、土地の選択肢は広がります。
土地を買う前に確認してほしいこと
特に小さな土地や、少しクセのある土地を検討するときは、購入前に一度、
- 必要な家が建つか
- 駐車や駐輪スペースを確保できるか
- 隣家との距離はどうなるか
- 光や視線をどこから取り込めるか
- 道路から車を出し入れできるか
- 土地と建物を合わせて予算内に収まるか
を考えてみてほしいと思います。
土地だけを見て、
「安いから買う。」
でも、
「狭いからやめる。」
でもありません。
その土地で自分たちの暮らしが成立するか。
そこまで確認してから判断することが大切です。
まとめ|理想の土地より、自分たちに合う土地を探す
私が購入したのは、約27坪の小さな土地でした。
隣家との距離も近く、前面道路にも余裕があるわけではありません。
土地単体で見れば、決して誰にでもおすすめできる条件ではないと思います。
それでも私は、
- 駅から近い
- 予算内で購入できる
- 必要な家を計画できる
- 設計によってプライバシーや光を確保できる
と考え、この土地を選びました。
そして実際に暮らしてみても、この判断に後悔はありません。
土地探しでは、
「条件の良い土地を見つけること」
だけに集中しなくてもいいと思います。
大切なのは、
「自分たちがしたい暮らしを、この土地で実現できるか。」
です。
土地と建物を一緒に考えると、それまで候補から外していた土地の見え方が変わることもあります。
土地を探す前に、夫婦や家族で、
- 絶対に譲れない条件
- できれば欲しい条件
- 設計次第で妥協できそうな条件
を分けてみてください。
そして気になる土地を見つけたら、
「この土地は何点か。」ではなく、「この土地で自分たちの暮らしができるか。」
を考えてみてほしいと思います。
特に小さい土地や変形地など、完成した家を想像しにくい土地ほど、購入前に一度プランを考える価値があります。
土地・予算・住宅会社・間取りまで、家づくり全体の進め方を順番に整理した記事はこちらです。

