家は商品ではない|一級建築士が「暮らしから家を考える」理由
私は、家は「商品」ではないと思っています。
その土地に、誰が住むのか。
そこで、どんな暮らしをしたいのか。
そこから考えてつくられるものだと思っているからです。

この記事では、住宅会社や商品を比較するときに、価格や性能だけでなく、
「自分たちの土地と暮らしに合うか」を考える視点を整理します。
「なぜ家を建てるのか」を考えた後に、家をどのような視点で選ぶのかを考える記事です。
- 今月中に決めてもらえれば
- 決算なので
- ぜひ買ってください
住宅展示場や住宅会社へ行くと、こんな話を聞くことがあります。
営業という仕事である以上、家を売らなければならないことは分かります。
私自身、住宅の設計だけではなく営業にも携わってきました。
それでも、住む人の暮らしより、売る側の都合が先になることには違和感があります。
家は、買って終わる商品ではなく、これから何十年も暮らす場所だからです。
- この提案は、私たちの土地と暮らしのどの条件をもとに考えていますか?
- 標準仕様と追加費用になるものの境界はどこですか?
- 今契約する必要がある理由と、判断を待った場合に変わる条件は何ですか?
家は商品ではない=買って終わりではない
車や家電であれば、ある程度完成された商品を比較して、自分に合うものを選ぶことができます。
もちろん家も、価格や性能、設備などを比較することはできます。
でも、家には大きな違いがあります。
建てる場所が違います。
そして、
そこに住む人の暮らしも違います。
- 道路がどちらにあるのか。
- 隣にはどんな建物があるのか。
- 窓の向こうに何が見えるのか。
- 周囲からどのように見られるのか。
同じ間取りを置いたとしても、土地が変われば、その家の居心地は大きく変わります。

だから私は、家を設計するとき、まずその土地を見ます。
- 道路の付き方。
- 周辺の環境。
そして特に、
「ここから何が見えるのか」
を考えます。
私が最初に聞くのは「何LDKがほしいですか」ではない
住宅設計をするとき、私は最初から間取りの話をしたいとは思いません。
私がまず知りたいのは、
「なぜ家を建てようと思ったのか」
です。
家を建てようと思うのには、何か理由があるはずです。
- 今の暮らしに不満があるのかもしれません。
- 家でやりたいことがあるのかもしれません。
- 家族との時間を大切にしたいのかもしれません。
- 仕事をする場所がほしいのかもしれません。
- 趣味を楽しめる場所がほしいのかもしれません。
その背景を知らないまま、
「何坪ほしいですか」
「3LDKですか、4LDKですか」
「この商品がおすすめです」
と話を進めても、その人にとって本当に必要な家は分からないと思っています。
まず知るべきなのは、
どんな家がほしいかではなく、どんな暮らしがしたいのか。
そこだと思います。

この「なぜ家を建てるのか」から考える理由については、こちらの記事で詳しく書いています。
同じ家族構成でも、同じ間取りにはならない
たとえば、家で仕事をする人なら、仕事をする場所は大切です。
単に余ったスペースに机を置けばいいわけではありません。
一日の長い時間をそこで過ごすのであれば、光の入り方や落ち着き、家族との距離感まで考えたいと思います。
趣味を家で楽しむ人なら、その場所も同じです。
- 映画を見る。
- 本を読む。
- 音楽を聴く。
- 料理を楽しむ。
- 外を眺める。
家族構成が同じだからといって、必要な家まで同じになるわけではありません。
何をして暮らしたいかによって、間取りは変わります。
だから本来、家はオンリーワンである方が自然なのだと思っています。
商品化された住宅そのものが悪いとは思っていない
ここで誤解してほしくないのですが、
私は規格住宅やハウスメーカーの商品そのものを否定しているわけではありません。
- 多くの人が使いやすい間取りをつくる。
- 仕様をある程度統一する。
- モデルハウスで実物を確認できるようにする。
こうした仕組み自体にはメリットがあります。
間取りも、多くの人が使いやすいようによく考えられているのだと思います。
ただ、私が問題だと思うのは、
「商品があるから、それを売る」という家づくりになってしまうことです。
商品を売ることが目的になってしまえば、
「なぜこの人にこの家が合うのか」
よりも、
「どうすればこの商品を契約してもらえるか」
が先になってしまう可能性があります。
そうなると、家を選ぶ側にもかなりの知識が必要になります。
営業担当者の説明を聞いて、
「この人が言っているから大丈夫だろう」
と判断してしまうこともあると思います。
でも、家はその場の勢いで買うには、あまりにも大きなものです。
住宅展示場についても、私は「展示されている家そのもの」を見るより、なぜ自分がその空間をいいと思ったのかを見る方が大切だと考えています。
「決算だから買ってください」に感じる違和感
私は住宅の営業も行っています。
だから営業する側の事情も分かります。
会社である以上、売上が必要で、そのためにはまず契約が必要です。
とはいえ私は、
「決算なので」
「今月契約してもらえれば」
という理由を、家を建てる人の判断材料にしてほしくありません。
なぜなら、
決算月は会社の都合であって、住む人の暮らしとは関係がないからです。
家づくりで大切なのことは、
- この土地で本当に良いのか。
- この間取りで暮らしやすいのか。
- この予算で無理がないのか。
- この家で、自分たちはどんな生活をするのか。
そこだと思います。
売る人の都合ではなく、
住む人にとってのベストを考える。
私は営業をするときも、設計をするときも、そこは変えたくありません。
施主が喜んでくれたときに「良い家」と思える
これまで多くの住宅設計に携わってきました。
設計していて、設計冥利に尽きる場面はやはり、
建てた家を見て、施主が喜んでくれるときが一番うれしいと思うものです。
自邸では、坪庭を中心に考えた

私自身の家は、敷地も建物も約27坪です。
決して大きな家ではありません。
でも私は、
「もっと広ければよかった」
とはあまり感じていません。
その理由の一つが、坪庭です。
限られた土地の中に坪庭をつくり、家の中から繰り返し見えるようにしました。
- 寝室から見る。
- 浴室から見る。
- 廊下を通るときに見る。
- ダイニングから見る。
- リビングから見る。
小さな外部空間ですが、家の中だけで27坪を完結させないようにしました。
結果として、限られた土地でも、数字以上の豊かさを感じられる家になったと思っています。
これは、
「27坪だからこの商品」
「この広さならこの間取り」
という考え方から生まれたものではありません。
この土地で、自分たちはどう暮らしたいのか。
そこから考えた結果です。
自邸では、坪庭だけでなく、駅からの距離、性能、2階リビングなど、限られた条件の中で「何を選び、何を手放すのか」を一つずつ考えました。
広い家が、良い家とは限らない
家づくりでは、どうしても数字を比べがちです。
30坪より35坪。
18畳より20畳。
収納は少ないより多い方がいい。
もちろん、広さが必要な人もいます。
ただ私は、
広いことそのものが、家の価値ではない
と思っています。
- 毎日過ごす場所が心地よい。
- 好きな景色が見える。
- 家事がしやすい。
- 自分の好きなことができる。
- 家族とちょうどいい距離で過ごせる。
そうして毎日の生活の質が上がるのであれば、広いけれど何となく落ち着かない家より、
小さくても心地よい家の方が、私にとっては良い家です。
実際に27坪の家で暮らして感じているメリットとデメリットについては、こちらの記事でまとめています。
住宅会社を選ぶなら、商品より暮らしを見てくれる人を
住宅会社を選ぶとき、商品の性能や価格、標準仕様を見ることも大切です。
ただ、それと同じくらい、
自分たちの暮らしを見てくれる人なのか
を見てほしいと思います。
何を売りたいのかを話す人ではなく、
「なぜ家を建てたいのですか」
「どんな暮らしがしたいですか」
と聞いてくれる人。
土地を見て「この場所なら、こんな暮らしができそうですね」と一緒に考えてくれる人。
商品に自分たちを合わせるのではなく、自分たちの暮らしに合う家を一緒に考えてくれる人。
私はそういう人と家づくりをする方がいいと思っています。
家は商品ではなく、これからの生活を決めるもの

家は、建てて終わりではありません。
完成した次の日から、
そこで毎日の生活が始まります。
- 朝起きて、
- 食事をして、
- 仕事へ行って、
- 帰ってきて、
- 家族と過ごして、
- 眠る。
それを何十年と繰り返します。
だから私は、家を単なる商品として考えることには違和感があります。
家は、
これからの生活をつくるものです。
だからこそ、家づくりを始めるときには、
「どこの商品を買うか」
より先に、
「自分たちは、どんな暮らしがしたいのか」
を考えてみてほしいと思っています。
家づくり全体を「予算・土地・広さ・性能・暮らし」という順番で考えたい方は、自邸の経験をまとめたこちらの記事も参考にしてください。
家は商品ではありません。
その土地で、そこに住む人が、これからどんな毎日を送るのか。
私は、そこから家を考えたいと思っています。

もし、
「住宅会社から提案された間取りで本当にいいのだろうか」
「自分たちがどんな暮らしをしたいのか、うまく整理できない」
という段階であれば、家づくりについてLINEからご相談いただけます。
気軽になんでもご相談くださいませ。
それでも何を質問したら良いのか分からない、そんな方はこちらの記事をご覧ください。

