27坪の狭小地でも開放感はつくれる|坪庭で視線をデザインした自邸の実例
私の自邸は、住宅やアパートに囲まれた敷地27坪の土地に建っています。
決して眺望に恵まれた場所ではありませんが、日中も夜も周囲の視線をほとんど気にせず、カーテンを閉めずに過ごせています。
この記事では、坪庭を中心に「どこを見て暮らすか」を考えた自邸の設計と、実際に住んで分かったことをご紹介します。


「狭い土地では、大きな窓をつけても隣家しか見えないのではないか」
「外からの視線が気になって、結局はカーテンを閉めたままになるのではないか」
住宅が密集した土地で家を建てるとき、このような不安を感じる方もいると思います。
私が購入した土地も、東側や南側に建物があり、視線が気持ちよく抜ける方向はほとんどありませんでした。
そのまま窓を設ければ、室内から見えるのは隣家の壁や窓です。
そこで私が間取りを考えるうえで大切にしたのが、
「この家で、どこを見て暮らすのか」
ということでした。
床面積を増やすことだけではなく、普段過ごす場所から何が見えるのか。
視線がどこまで伸び、どこで止まるのか。
その視線の行き先をつくるために、私は家の中心となる場所に坪庭を計画しました。
周囲を建物に囲まれた27坪の敷地
私の自邸は、札幌市にある敷地面積約27坪・延床面積約27坪の住宅です。
敷地の周囲には住宅やアパートがあり、遠くまで見渡せるような眺望はありません。
さらに、周囲に建物が近接しやすい地域なので、隣家との距離や窓の位置から受ける影響も大きい土地でした。

建築前の敷地を見ると、一般的には次のような印象を持つかもしれません。
- 周囲の建物から視線を受けやすい
- 窓を設けても隣家しか見えない
- 光や開放感を得にくい
- 27坪の中に庭までつくる余裕はない
私自身、この土地を見たときに、素直に「眺めの良い土地だ」と感じたわけではありません。
ただ、駅からの距離や価格など、私たちが土地に求めていた条件には合っていました。
土地の弱点があることは分かっていましたが、その弱点を設計でどこまで変えられるかを考えました。
土地を選んだ理由や、購入前に考えたことについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

大きな窓だけでは、開放的な家にならない

家を明るく、広く見せようとすると、大きな窓を設けたくなります。
もちろん、窓の大きさは採光や開放感に関わります。
ただし、窓の先に隣家の壁や窓があれば、外からの視線が気になり、日中でもカーテンを閉めることになります。
窓が大きくても、カーテンで視線が止まってしまえば、期待していたほどの広がりは感じられません。
反対に、それほど大きな窓ではなくても、視線の先に空や緑があり、その奥行きを感じられれば、室内の印象は変わります。
広さの感じ方は、床面積だけではなく、視線がどこまで伸びるかにも左右されます。
私が考える「視線の抜け」とは、単に遠くまで見えることではありません。
隣家の窓など、見せたくないものを避けながら、空や緑、室内の奥へ自然に視線が伸びていくことです。
そのため、自邸では窓を大きくすることよりも、窓の先に何を見せるかを先に考えました。
庭を家の中心に置いた理由

周囲に気持ちよく眺められる景色がないのであれば、敷地の中につくるしかありません。
そこで計画したのが、建物と一体になった小さな外部空間である坪庭です。
坪庭は、単に植栽を眺めるための庭ではありません。
私の自邸では、次の役割を持たせています。
- 隣家からの視線を外壁やルーバーで遮る
- 住宅に囲まれた敷地の中へ光を取り入れる
- 寝室や浴室から緑を眺められるようにする
- 1階から2階へ空と光をつなぐ
- 室内の視線を外へ伸ばし、奥行きをつくる
敷地が27坪しかない中で坪庭をつくれば、その分だけ室内として使える面積は減ります。
室内を少しでも広くすることだけを考えれば、坪庭をつくらない選択もありました。
それでも私は、床面積を増やすより、毎日の暮らしの中に光や緑が見える場所をつくることを選びました。
この坪庭は、最初から東側に決まっていたわけではありません。
道路に近い西側へ配置する案と、隣家に近い東側へ配置する案を比較し、室内からの見え方やプライバシー、部屋のつながりを検討したうえで東側を選びました。
坪庭の位置を決めるまでの比較については、こちらの記事にまとめています。

1階では、寝室と浴室から坪庭を見る

1階には、寝室と浴室を配置しています。
どちらも坪庭に面しているため、窓の先に見えるのは隣家ではなく、坪庭の植栽や外壁です。
寝室では、朝起きたときに坪庭の緑が目に入ります。
浴室でも、周囲の視線を気にせず、窓の外を眺められます。

外に向かって大きく開くのではなく、外壁とルーバーで囲まれた敷地内の外部空間へ開くことで、プライバシーと外とのつながりを両立させました。
坪庭を設けたことで、周囲を建物に囲まれた1階にも、光と緑を取り込めるようになりました。
2階では、ダイニングからリビング、ルーフテラスへ視線をつなぐ
2階にはLDKを配置しています。
坪庭の上部は吹き抜け状の外部空間になっており、1階の坪庭から2階へ光と空がつながります。

2階では、ダイニング、リビング、ルーフテラスの関係を考え、室内だけで視線が止まらないようにしました。
リビングの先にルーフテラスがあります。
室内から外へ視線が続くことで、LDKの床面積以上の奥行きを感じられます。
2階リビングにした理由や、実際に暮らして感じた不便については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

視線を完全に遮るのではなく、見え方を整える
この計画で意識したのは、周囲の景色をすべて隠すことではありません。
外部を完全に閉じれば、視線は遮れます。
しかし、同時に光や空とのつながりまで失われ、閉塞感につながることもあります。
そこで私は、外壁やルーバーを使いながら、
- 隣家の窓など、見せたくない方向は隠す
- 光や空を感じられる方向は残す
- 坪庭の植栽へ視線を導く
という調整をしました。
設計中は、平面図だけで判断していません。
スケッチだけではなく、立面・断面を使い、室内に立ったときに隣家がどの程度見えるのか、どこまで壁を立ち上げれば視線を遮れるのかを確認しました。

窓の位置は、平面図だけを見ると問題がないように感じても、実際の目線の高さでは隣家の窓と重なることがあります。
そのため、窓の大きさだけではなく、室内で過ごす位置と目線の高さまで考える必要があります。
暮らして分かった、視線を考えることの効果
実際に暮らし始めてからも、外部からの視線はほとんど気になっていません。
日中だけではなく、夜に照明をつけた状態でも、カーテンを閉めずに過ごすことができています。

これは、単に窓を少なくしたからではありません。
隠したい方向を外壁やルーバーで遮りながら、坪庭や空へ視線が伸びるようにした結果です。
室内の床面積が実際に増えたわけではありません。
それでも、視線が室内だけで止まらず外まで続くことで、27坪という数字から想像していたほどの狭さは感じていません。
また、坪庭と視線がつながるルーフテラスも、暮らしの中の居場所になりました。
天気の良い日に仕事をしたり、夫婦で焼肉をしたりしています。
設計時には「外へ視線を伸ばす場所」として考えていた空間が、住み始めてからは実際に過ごす場所にもなりました。
小さな家の中に複数の居場所をつくった考え方については、こちらの記事で紹介しています。

完全には隠しきれなかった南側の窓
もちろん、計画どおりになった部分だけではありません。
東側にある黄色い建物は、坪庭の外壁によって存在感をかなり抑えることができました。
一方で、南側の建物は、室内の立ち位置によって窓がわずかに見える場所があります。

計画段階では隠せているつもりでも、実際の空間では、立つ場所や見る角度によって見え方が変わります。
幸い、相手側にあるのは北側の小さな窓なので、暮らしていて視線が気になるほどではありません。
ただ、この経験から改めて感じたのは、視線は一つの場所から確認するだけでは足りないということです。
- ソファに座った位置
- ダイニングの椅子に座った位置
- キッチンに立った位置
- 室内を移動しているときの位置
それぞれの場所から何が見えるのかを確認する必要があります。
すべてを完全に隠そうとすると、必要以上に壁が高くなり、光や空まで遮ってしまうことがあります。
どこまで隠し、どこを残すのか。
視線設計では、そのバランスも大切だと感じています。
坪庭をつくれば、必ず広く感じるわけではない

坪庭を設ければ、それだけで開放的な家になるわけではありません。
室内で普段過ごす場所と坪庭がつながっていなければ、せっかくの外部空間も眺めるだけの場所になります。
また、窓の先に壁しか見えなければ、かえって閉じた印象になることもあります。
大切なのは、坪庭をつくること自体ではなく、
「誰が、どこから、何を見るのか」
を考えることです。
私の自邸では、寝室や浴室からは坪庭の緑を眺め、2階のLDKからは空とルーフテラスへ視線をつなげました。
同じ坪庭でも、見る場所によって役割を変えています。
坪庭は、周囲に開けた景色がない敷地で、家の中から見える風景を自分たちでつくるための方法の一つです。
家づくりで確認しておきたい3つの視線
自邸を設計し、実際に暮らしてみて、視線を考えるときは次の3点を確認した方がよいと感じています。
1.普段過ごす位置から確認する

窓の正面に立ったときだけではなく、ソファやダイニング、キッチンなど、長く過ごす位置から外を確認します。
座ったときと立ったときでも、見える範囲は変わります。
2.窓ではなく、窓の先を見る

窓の大きさや配置だけではなく、その先に何が見えるのかを確認します。
隣家の窓と重なる場合は、窓の位置をずらす、壁やルーバーを設ける、植栽へ視線を導くなどの方法を考えます。
3.日中と夜の両方を想像する

日中は気にならなくても、夜に室内の照明をつけると、外から室内が見えやすくなります。
カーテンを閉めずに過ごしたい場所では、夜の見え方まで考えておくことが大切です。
まとめ|窓の大きさより、視線の行き先を考える
私の自邸は、住宅やアパートに囲まれた敷地27坪の土地に建っています。
開けた景色のある土地ではありません。
そこで私は、外にある景色へ向かって開くのではなく、敷地の中に坪庭をつくり、その場所へ視線を導きました。
坪庭を中心に、1階の寝室と浴室、2階のダイニングとリビング、ルーフテラスを緩やかにつなげています。
その結果、日中も夜も周囲の視線をほとんど気にせず、カーテンを閉めずに過ごせるようになりました。
床面積は、住まいの広さを考えるうえで大切な数字です。
ただ、実際の広さの感じ方は、床面積だけで決まるものではありません。
普段過ごす場所から何が見えるのか。視線がどこまで伸び、どこで止まるのか。
それによって、同じ面積でも空間の印象は変わります。
坪庭は、そのための唯一の正解ではありません。
敷地条件や家族の暮らし方によって、窓の位置、壁、植栽、吹き抜けなど、選択肢は変わります。
大切なのは、間取りを考えるときに、部屋の広さだけではなく、
「この家で、どこを見て暮らすのか」
まで考えることだと思います。
土地を見ても、そこでどのような暮らしができるのか想像できないことがあります。
土地を購入する前に建築士へ相談する意味については、こちらの記事で詳しく紹介しています。


