【建てなかったけど良かった家】高低差1.4mの土地で考えた平屋設計|視線の抜けと庭のつながり
このシリーズでは、実際には建てなかったものの、設計として価値があったプランを紹介しています。

今回紹介するのは、過去に設計したものの、最終的には建築に至らなかった平屋のプランです。
未成案ではありますが、この計画には
- 敷地条件への向き合い方
- 視線の設計
- 高低差の扱い方
といった、家づくりにおいて本質的な要素が詰まっています。
これから家づくりを考える方にとって、何かしらのヒントになれば嬉しいです。
予算の関係でこの計画は最終的に没になりました。
敷地条件|1.4mの高低差がある土地

計画地は、道路側が低く、道路から車一台分の奥は全て敷地が約1.4m高くなる段差地の敷地でした。
一般的にこのような土地で段差を解消する方法としては、
- 1.4mの高さ分の外階段を設けて家は平らに建てる
- 敷地を道路と同じ高さまで掘り下げる
といった方法が取られることが多いですが、基本的に私はそれらを採用しませんでした。
理由はシンプルで、
- 土を捨てるコストが勿体無い
- 土地を活かして自然な計画になる
- 北海道の冬を考えると屋外階段はリスク大
とくに大きいのは屋外階段のリスクです。
雪や凍結による転倒の危険性は、日常的に使う動線としては無視できません。
そこで私は、高低差を外で処理するのではなく、建物の中で高低差を解消するという考えで計画しています。
設計の軸|庭とつながるLDKと、もうひとつの抜け
計画プランがこちらです。

この住宅の大きなテーマは、「視線の抜けをどうつくるか」でした。
南側には庭を配置し、LDKと連続する関係をつくっています。
大きな開口を通して、室内と庭が一体に感じられる構成です。
リビングにいても、ダイニングにいても、キッチンに立っていても、常に外の気配を感じることができます。
こうした“視線の抜け”の考え方については、こちらの記事でも詳しくまとめています。
一方で、この計画では“もうひとつの抜け”も意識しています。
それがこの土地ならではのポイントで、北東側の街並みへの視線です。
寝室を北東に配置することで、落ち着いた光の中で外の景色を切り取るような空間をつくっています。
土地を活かした計画になります。
南の「開く庭」と、北東の「切り取る景色」。
異なる性質の抜けを持たせることで、コンパクトな平屋でも奥行きを感じられる構成としています。
高低差の解き方|“外ではなく中で処理する”
この計画の特徴的なポイントのひとつが、エントランスのつくり方です。
道路側から玄関に入り、そのままフラットに室内へ入るのではなく、エントランスの中に階段を設けて、敷地の高低差を吸収しています。
これによって、
・外部動線はシンプルで安全
・内部で空間の切り替えが生まれる
という2つの効果が生まれます。
単なる「段差の解消」ではなく、空間のメリハリが活きてきます。
外から帰ってきて、数段上がることで、街のレベルから生活のレベルへと意識が切り替わる。
この小さな動作が、住まいの質を高める要素になります。

平屋+断面操作という考え方
断面計画はこのような形になります。

平屋というと、ワンフロアでフラットに広がるイメージが強いかもしれません。
しかしこの計画では、あえて内部にレベル差を設けています。
・エントランスでの段差
・視線の高さの変化
・空間ごとの居場所の違い
これらを断面的に操作することで、面積以上の広がりを感じさせる構成としています。
玄関に入ってからの天井の開放感、上から光が降りてくるように窓を計画しています。
コンパクトな住宅においては、「平面」だけでなく、断面でどう空間をつくるかが非常に重要になります。
悩んだポイントとトレードオフ
もちろん、この計画にも迷いやデメリットはありました。
例えば、外で高低差を処理しないことで、
・内部階段分の面積が必要になる
・バリアフリー性はやや下がる
といった側面はあります。
また、平屋でありながら段差があることに対して、違和感を持つ方もいるかもしれません。
ですが、終の住処として考えた時に、屋外階段こそ将来的にはストレスになるはずだと思っています。
階段からの転倒は重大事故にもつながります。
- 屋内階段の安全性
- スキップフロアによる空間のメリハリ
これらを優先し、内部での段差処理を選択しています。
家づくりにおいては、すべてを満たす正解はありません。
だからこそ、何を優先するかを明確にすることが大切だと考えています。
この計画から得られるヒント
このプランは実現しませんでしたが、考え方としてはさまざまな敷地に応用できます。
・高低差は必ずしも外で処理しなくていい
・視線の抜けは一方向だけでなく複数つくる
・平屋でも断面で空間に変化をつくれる
特に都市部やコンパクトな敷地では、「抜け」と「断面操作」が空間の質を大きく左右します。
まとめ|実現しなかったからこそ見えること
建てられなかった計画には、形になった住宅とはまた違った価値があります。
そこには、純粋に「どうすれば良くなるか」を考えたプロセスが残っているからです。
このプランも、敷地条件に正面から向き合いながら、どうすればより豊かな暮らしができるかを考え続けた結果のひとつです。
もしこれから家づくりを考える方がいれば、完成した事例だけでなく、こうした“思考の跡”も参考にしてもらえたらと思います。









