広さに頼らない設計

27坪と30坪、どっちがいい?|一級建築士が考える家の広さと「3坪の差」

一級建築士|ドル

「家を建てるなら、何坪くらい必要なんだろう?」

家づくりを考え始めたとき、よく出てくる疑問のひとつです。

  • 30坪くらいは必要なのか。
  • 27坪でも暮らせるのか。
  • 25坪では狭すぎるのか。
  • 反対に、35坪あれば安心なのか。

私はこれまで100棟以上の住宅づくりに携わり、自分自身も札幌で約27坪の家を建て、実際に暮らしています。

その経験から感じるのは、

「何坪あれば正解」という答えはない

ということです。

むしろ大切なのは、

「あと3坪あれば、何ができるのか?」

を考えてみること。

今回は、私自身が27坪の家に暮らしている立場から、27坪と30坪の違いについて考えてみます。

27坪と30坪、その差は「3坪」

まず数字だけで比較してみます。

27坪は約89㎡。

30坪は約99㎡。

その差は約10㎡、つまり約3坪です。

1坪は何㎡?

部屋の広さを縦方向・横方向としたときの、

縦方向1.82m×横方向1.82mの広さです。

1.82m×1.82m=3.3124㎡

3坪というと、小さな差に感じるかもしれません。

でも住宅では、この約10㎡が意外と大きな意味を持ちます。

例えば、

  • LDKを少し広くする
  • 収納を増やす
  • 洗面室を広げる
  • ファミリークローゼットをつくる
  • 子ども部屋を少し大きくする
  • 書斎や趣味のスペースをつくる
  • 廊下や各部屋にゆとりを持たせる

といったことができます。

つまり、

3坪あれば、暮らしに「何かひとつ」を追加できる可能性がある。

一方で、3坪増やしたからといって、必ず暮らしが豊かになるとは限りません。

ここが、家の広さを考えるときに難しいところです。

27坪でも暮らせる。でも、誰にでもおすすめできるわけではない

私自身は27坪の家に暮らしています。

だから、「27坪でも十分暮らせます」とは言えます。

実際、夫婦2人で暮らしていて、LDKや水回り、寝室、収納など、必要なものは確保できています。

ただし、

27坪なら誰にとっても十分、という意味ではありません。

家族構成や暮らし方によって、必要な広さは変わります。

例えば、

  • 家族4人で暮らす
  • 子どもがそれぞれ個室を使う
  • 大量の衣類や荷物がある
  • 家の中で仕事をする
  • 趣味のための部屋が欲しい
  • 大きなダイニングテーブルを置きたい
  • 室内干しスペースを広く取りたい

こうした希望がたくさんあるなら、27坪では設計の難易度が上がります。

逆に、

  • 家族でLDKに集まる時間を大切にしたい
  • 個室は寝るための場所と考えている
  • 物を増やしすぎない
  • 広い廊下やホールは必要ない
  • 立地や性能にもお金を使いたい

という暮らしなら、27坪という選択肢は十分に考えられます。

30坪にすると何が変わる?

では、27坪から30坪にしたらどうなるのでしょうか。

ここで大切なのは、

「10㎡増える」ではなく、「その10㎡をどこに使うか」

です。

例えば30坪になったからといって、「全部の部屋を3㎡ずつ広げよう」と考える必要はありません。

むしろ、

27坪

必要なものを厳選して、コンパクトにまとめる。

30坪

27坪では諦めたものを、ひとつふたつ追加できる。

このくらいの違いとして考えると分かりやすいと思います。

例えば、3坪をLDKに使うとしても、単純に「広ければ広いほど良い」というわけではありません。

家具の大きさや家族の過ごし方によって、必要なLDKの広さは変わります。

我が家は延床約27坪ですが、LDKは約17畳です。

12畳〜20畳ではどのくらい使い方が変わるのか、こちらの記事で比較しています。

▶︎ 27坪のLDKは何畳必要?一級建築士の自邸は約17畳|12畳〜20畳を比較

3坪増やすなら「何を増やすか」を先に考える

家づくりでは、

「30坪くらい欲しい」

という希望をよく聞きます。

でも、

「なぜ30坪なのですか?」

と聞くと、

「みんなそれくらいだから」

という答えになることがあります。

これは少しもったいないと思っています。

30坪という数字を先に決めるのではなく、

「何が足りないから3坪必要なのか?」

を考えてみる。

例えば、

「子ども部屋を2つ確保したい」

のであれば、そのために必要な面積を考える。

「収納が足りないのが不安」

なら、収納量から逆算する。

「LDKを家族4人でゆったり使いたい」

なら、家具を置いた状態で必要な大きさを考える。

こうすると、

「30坪必要」なのではなく、「この暮らしをするために30坪必要」

という判断に変わります。

この違いは、とても大きいと思います。

また、

「収納が足りないから、家を広くしたい。」

という場合も、本当に収納のために床面積を増やす必要があるのかは、一度考えてみてもよいと思います。

我が家では大きな収納を一か所につくるのではなく、使う場所の近くへ収納を分散させました。

限られた面積で収納をどう考えたのかは、こちらで詳しく紹介しています。

▶︎ 収納を“分散”する設計|27坪の家で実践した、使う場所にしまう収納計画

27坪から30坪にすると、建築費はいくら増える?

ここも気になるところです。

単純に考えれば、

27坪から30坪なので3坪増えています。

仮に坪単価100万円なら、

3坪 × 100万円 = 300万円

となります。

ただし、実際の建築費はそれほど単純ではありません。

床面積が増えることで、

  • 基礎
  • 柱・梁
  • 外壁
  • 屋根
  • 内装
  • 建具
  • 断熱材
  • 設備

など、さまざまな部分に影響します。

また、増やした3坪が建物の外形を大きくするのか、既存の形の中で階を広げるのかによっても変わります。

そのため、

「3坪増やしたら必ず○万円」

とは言えません。

ただ、重要なのは、

その追加費用を払ってでも欲しい3坪なのか?

ということです。

ここで考えておきたいのは、家の広さだけではありません。

3坪増やすために使うお金を、

  • 床面積に使うのか
  • 住宅性能に使うのか
  • 内装や設備に使うのか
  • 土地や立地に使うのか

という選択もあります。

家づくりでは建物だけではなく、土地・建物・諸費用を含めた総予算の中で考えることが大切です。

私が自邸でどのように総予算を決め、土地と建物へ配分したのかはこちらにまとめています。

▶︎ 家づくりの予算はどう決める?土地・建物・諸費用を一級建築士が整理

3坪増やす価値があるケース

では、どんな場合なら30坪にする価値があるのでしょうか。

私は、

その3坪によって、毎日のストレスが減るなら価値がある

と考えています。

例えば、

  • 収納が足りず、毎日片付けに困っている
  • 洗濯動線が悪く、家事に時間がかかる
  • 子どもの勉強場所が確保できない
  • 家族が増えたときに個室が足りない
  • LDKに必要な家具を置くと窮屈になる
  • 在宅ワークの場所が確保できない

こうした問題を解決できるなら、3坪は単なる「面積」ではありません。

毎日の暮らしを良くするための10㎡

と考えることができます。

逆に、3坪増やさなくてもいいケース

一方で、

「なんとなく広い方が安心だから」

という理由だけで30坪にする必要もありません。

例えば27坪でも、

  • 必要な家具が無理なく置ける
  • 収納量が足りている
  • 家事動線が整理されている
  • 家族それぞれの居場所がある
  • 採光や通風に問題がない
  • 将来の暮らし方も想像できる

のであれば、無理に面積を増やす必要はありません。

むしろ、その3坪分のお金を、

断熱性能や窓、設備、素材、外構などに回した方が暮らしの満足度が高くなる

場合もあります。

私が27坪の家で「広さより大事」と感じたこと

実際に27坪の家に暮らしてみると、

「もっと広ければよかった」

と感じる場面が全くないわけではありません。

ただ、それ以上に感じるのは、

限られた面積をどこに使うかの方が重要だった

ということです。

私の家では、2階にLDKを配置しています。

1階には寝室や水回りなどをまとめ、2階のLDKからは外部とのつながりも感じられるようにしています。

単純に床面積を増やすのではなく、

視線の抜けや光、外とのつながりによって「広く感じる」こと

も意識しました。

27坪という数字だけを見ると、小さく感じるかもしれません。

でも、実際に暮らしてみると、

面積と体感する広さは、必ずしも同じではない

ことが分かります。

「27坪か30坪か」ではなく、「何を優先するか」

ここまで27坪と30坪を比較してきました。

でも、最後に伝えたいのは、

27坪が正解でも、30坪が正解でもない

ということです。

家づくりでは、

「広い家=良い家」

でもなければ、

「小さい家=賢い家」

でもありません。

大切なのは、

限られた予算の中で、何にお金と面積を使うか。

例えば、

27坪にして、立地と性能にお金を使う。

という選択もあります。

一方で、

30坪にして、家族それぞれの居場所を確保する。

という選択もあります。

35坪にして、収納や趣味のスペースまでゆったり確保することが暮らしに合う人もいるでしょう。

だから私は、

「何坪の家にするか」を決める前に、「どんな暮らしをしたいか」を考えてほしい

と思っています。

まとめ|3坪を「広さ」ではなく「暮らし」に使う

27坪と30坪。

数字だけを比べれば、たった3坪の違いです。

でも、その3坪をどう使うかによって、家の暮らし方は変わります。

3坪増やすことで、

  • 家事が楽になる
  • 収納のストレスがなくなる
  • 家族の居場所が増える
  • LDKが使いやすくなる
  • 将来の暮らしに対応できる

のであれば、その3坪には大きな価値があります。

反対に、特に使い道がないのであれば、無理に増やす必要はありません。

家の面積を決めるときは、

「あと3坪欲しい」

ではなく、

「あと3坪で、暮らしの何が変わる?」

と考えてみてください。

その答えが見えてくると、自分にとって27坪がいいのか、30坪がいいのか、あるいは35坪が必要なのかも、少しずつ見えてくるはずです。

家の広さは、数字から決めるものではなく、

暮らしから決めるもの。

私はそう考えています。

この記事を読んだ後に考えてほしいこと

27坪と30坪を比べると、どうしても「3坪広い方がいい」と考えたくなるかもしれません。

でも、この記事を読んだあとに一度考えてみてほしいことがあります。

もし3坪増やせるとしたら、あなたは何を増やしたいでしょうか。

  • LDKを広くしたい
  • 収納を増やしたい
  • 書斎がほしい
  • 洗面やランドリーを広くしたい
  • 子ども部屋をつくりたい
  • 玄関にゆとりがほしい

あるいは、

「特に増やしたいものはない」

という答えになるかもしれません。

それなら、無理に家を大きくする必要はないと思います。

反対に、「ここだけはどうしても欲しい」というものが見えてきたのであれば、そのために3坪増やすことには意味があります。

大切なのは、27坪か30坪かという数字そのものではありません。

その面積を使って、どんな暮らしをつくりたいのか。

そこから家の広さを考えてみてください。

家の広さだけでなく、土地・予算・間取り・性能まで、家づくり全体をどのような順番で考えればよいのかについては、こちらにまとめています。

▶︎ 一級建築士による27坪の家づくり完全ガイド|限られた条件でも、暮らしは豊かにできる

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Profile
27坪の狭小地に自邸を設計し、現在も実際に暮らしています。
広さに頼らず、視線や居場所のつくり方で暮らしの質が変わることを実感しています。
その経験をもとに、限られた条件でも豊かに暮らせる住まいを設計します。
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