広さに頼らない設計

坪庭の位置はどこが正解か|27坪の自邸で西側案と東側案を比較した設計記録

一級建築士|ドル

自邸の坪庭は、最初から現在の位置に決まっていたわけではありません。

道路に面した西側へ配置する案と、隣家に近い東側へ配置する案を比較し、最終的に東側を選びました。

この記事では、どちらかを正解とするのではなく、何を比べ、なぜ東側を選んだのかを振り返ります。

一級建築士 ドル
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「坪庭をつくるなら、どこに配置するのがよいのか」

方位や日当たりから決めようとする方も多いと思います。

もちろん、光の入り方は大切です。

ただ、実際に自邸を計画してみると、坪庭の位置は日当たりだけでは決められませんでした。

どの部屋が坪庭に面するのか。

誰が、どこから、どのくらいの頻度で眺めるのか。

外からも見える庭にするのか。それとも、家の中だけに開く庭にするのか。

坪庭の位置を変えると、庭の見え方だけではなく、ガレージやアプローチ、室内の配置まで変わります。

私の自邸では、主に次の2案を比較しました。

  • 道路に面した西側へ配置し、ガレージや外構と一体でつくる案
  • 隣家に近い東側へ配置し、室内から繰り返し眺める案

どちらも成立する計画でした。

最終的な判断を分けたのは、庭そのものの見栄えではなく、その庭が毎日の暮らしにどう関わるかでした。

27坪の敷地に、なぜ坪庭をつくろうとしたのか

私の自邸は、札幌市にある敷地面積約27坪・延床面積約27坪の住宅です。

決して余裕のある土地ではありません。

坪庭を設ければ、その分だけ建物や室内に使える面積は減ります。

床面積だけを優先するのであれば、庭をつくらず、その部分まで室内にする考え方もありました。

それでも坪庭を計画したのは、家の中で光や緑を感じながら暮らしたかったからです。

私たち夫婦は、旅館のように、室内にいながら庭の気配を感じられる空間が好きでした。

そのため、坪庭を単に外に余った場所としてつくるのではなく、寝室や浴室、LDKなど、日常的に過ごす場所とつなげたいと思っていました。

坪庭は、自邸の中で「あると良いもの」ではなく、間取りを決める軸の一つになっていました。

だからこそ、その位置を西側にするか東側にするかは、最後まで迷った部分です。

最初に検討した西側の坪庭案

最初に検討したのは、道路に面した西側へ坪庭を配置する案でした。

我が家の敷地は西側道路に面しているため、敷地の中で最も外へ開きやすいのは西側です。

この場所に坪庭を設けると、ガレージやアプローチと庭を一体で計画できます。

道路から敷地へ入り、坪庭を見ながら建物へ近づく。

室内だけではなく、外から見たときにも庭の存在を感じられる構成です。

西側案の良かったところ

西側案には、次のような魅力がありました。

  • アプローチと坪庭を一体で計画できる
  • ガレージと庭の間に広がりをつくれる
  • 道路側へ視線が抜け、敷地の奥行きを感じやすい
  • 自分たちだけではなく、通りからも庭を感じてもらえる

外構と建物を一体で見せる計画としては、西側案の方が素直だったと思います。

道路側へ緑が見えることで、家の中だけではなく、周囲の街並みに対しても小さな庭をつくれます。

私自身、この考え方には今でも魅力を感じています。

西側案で気になったこと

ただし、西側へ坪庭を配置すると、庭に面する場所の一つがガレージになります。

ガレージから庭が見えることにも意味はありますが、私が坪庭に求めていたのは、日常生活の中で繰り返し眺められることでした。

寝室や浴室、リビングなど、人が長く過ごす場所から見る回数を考えると、西側案では坪庭と室内のつながりが少し弱くなります。

また、西側案の坪庭は外構やアプローチの一部としての性格が強くなります。

言い換えると「街や外に向かって開く庭」です。

それは大きな魅力ですが、私が自邸でつくりたかった庭とは、少し方向が違っていました。

最終的に採用した東側の坪庭案

最終的に採用したのは、隣家に近い東側へ坪庭を配置する案です。

東側は、もともと眺望に恵まれた方向ではありませんでした。

そのまま窓を設ければ、室内から見えるのは隣家の壁や建物です。

そこで、隣家側に外壁とルーバーで囲まれた坪庭をつくり、外の景色を見るのではなく、敷地の中に自分たちで見たい景色をつくることにしました。

外に対しては閉じながら、室内からは坪庭へ開く構成です。

東側案でつながった5つの場所

東側へ配置したことで、坪庭は次の場所から見えるようになりました。

  • ダイニング
  • リビング
  • 廊下
  • 寝室
  • 浴室

ダイニングとリビングは同じLDKの中にありますが、過ごす位置によって坪庭の見え方が変わります。

1階では、寝室や浴室から植栽を眺められます。

2階では、坪庭上部の吹き抜け状の外部空間を介して、光や空の気配を感じられます。

坪庭を外構の一部として切り離すのではなく、1階と2階にある複数の場所を、視線で緩やかにつなげる計画になりました。

東側案の良かったところ

我が家にとって、東側案の良さは次の点にありました。

  • 室内の複数の場所から坪庭を眺められる
  • 隣家側の見たくない景色を、坪庭の景色へ変えられる
  • 外からの視線を抑えながら、光や緑を取り込める
  • 1階と2階の空間を、坪庭を介してつなげられる

西側案が外へ広がる庭だとすれば、東側案は家の内側へ広がる庭です。

道路から見たときの華やかさは、西側案の方があったかもしれません。

それでも、私たちは外からどう見えるかより、家の中で何度目に入るかを優先しました。

西側案と東側案を比較すると

2つの案を、私たちが検討した内容に沿って整理すると次のようになります。

比較したこと西側の坪庭案東側の坪庭案
敷地との関係道路側へ開く隣家側に囲われた庭をつくる
庭の性格外構・アプローチの一部暮らしの中で眺める場所
主につながる場所ガレージ・アプローチダイニング・リビング・廊下・寝室・浴室
視線の方向街や道路へ広がる家の内側へ視線を導く
魅力外構と建物を一体で見せられる複数の場所から繰り返し眺められる
私たちにとっての課題室内から見る機会が少なくなる街から庭が見えにくくなる

この比較で分かるのは、西側案と東側案のどちらが優れているかではありません。

同じ敷地に同じ大きさの坪庭をつくっても、位置によって庭の役割が変わるということです。

坪庭を外構の一部として見せたいのであれば、西側案が合っています。

反対に、家の中から何度も眺めたいのであれば、東側案の方が私たちの暮らしには合っていました。

東側を選んだ決め手は「見る回数」だった

最終的な判断を振り返ると、決め手になったのは日当たりでも方位でもありませんでした。

毎日の暮らしの中で、坪庭を何度見るか。

これが、私たちにとって一番大きな違いでした。

西側案では、外から帰ってきたときやガレージを使うときに、坪庭が印象に残ります。

東側案では、朝起きたとき、廊下を通るとき、浴室に入るとき、ダイニングやリビングで過ごすときに、坪庭が目に入ります。

私たち夫婦が求めていたのは、来客を迎える庭や街へ見せる庭より、生活の中で何度も目に入る庭でした。

だから、東側を選びました。

どちらも魅力のある計画でしたが、私たちは暮らしの中で見る回数を優先しました。

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実際に暮らして分かったこと

完成後、坪庭は寝室、浴室、廊下、ダイニング、リビングから見える場所になりました。

  • 寝室では、朝起きたときに坪庭の緑が目に入ります。
  • 浴室では、周囲の視線を気にせず、窓の外を眺められます。
  • 廊下を通るときにも庭が見え、2階のLDKでは、坪庭上部の光や空の気配を感じられます。

実際に暮らしてみると、坪庭は長時間眺め続けるものというより、日常の中でふと目に入る存在です。

その小さな積み重ねが、家の居心地に影響していると感じています。

27坪の敷地に坪庭をつくったため、室内として使える面積は減りました。

それでも、私たちにとっては、床面積を少し増やすことより、複数の場所から光や緑を感じられることの方が価値のある選択でした。

坪庭によって視線の抜けをつくった考え方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

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それでも、西側案を捨てきれない理由

東側を選んだことに後悔しているわけではありません。

実際に暮らしてみても、私たちの生活には東側の坪庭が合っていたと感じています。

ただ、西側案も魅力的な計画でした。

西側へ坪庭を配置すれば、道路側の開放感を活かし、ガレージやアプローチと庭を一体で見せられます。

街並みに対して緑を見せる家としては、西側案の方が魅力的だった可能性もあります。

西側案と東側案は、良い案と悪い案の比較ではありません。

異なる暮らし方をつくる、2つの案でした。

もし私たちが、家の中から庭を見ることより、外構や街とのつながりを優先していたら、西側を選んでいたと思います。

だから今でも、西側案には別の可能性があったと感じています。

坪庭の位置を考えるときに確認したい4つのこと

自邸の2案を比較した経験から、坪庭の位置を考えるときは、方位だけではなく次の点を確認した方がよいと思います。

1.誰に見せる庭なのか

家族が室内から眺める庭なのか、来客や通りからも見える庭なのか。

誰に見せたいかによって、道路側と建物の内側では役割が変わります。

2.どこから、何回見るのか

リビングから一度見えるだけなのか、寝室や浴室、廊下からも繰り返し見えるのか。

図面上で庭に面している部屋を数えるだけでなく、普段の動きの中で目に入る回数まで想像します。

3.坪庭の反対側に何がくるのか

坪庭の位置を変えると、庭に面する部屋も変わります。

ガレージ、寝室、浴室、LDKのどれを庭とつなげたいのかを考える必要があります。

4.坪庭に何を求めるのか

採光のためなのか、植栽を眺めるためなのか、視線を外へ伸ばすためなのか、外構として見せるためなのか。

坪庭に求める役割が明確になると、配置の判断もしやすくなります。

まとめ|坪庭の正解は、方位だけでは決まらない

自邸では、西側道路に面した坪庭案と、東側の隣家側に設ける坪庭案を比較しました。

西側案には、ガレージやアプローチと庭を一体でつくり、街へ開ける魅力がありました。

東側案には、寝室、浴室、廊下、ダイニング、リビングから繰り返し眺められる良さがありました。

私が選んだのは東側です。

旅館のように、家の中で光や緑を感じながら暮らしたかったからです。

ただし、東側が坪庭の正解というわけではありません。

外構や街との関係を大切にするなら、西側案にも十分な魅力があります。

坪庭の位置を決めるときに大切なのは、東西南北だけを見ることではありません。

誰が、どこから、どのくらいの頻度で庭を見るのか。

その庭を、外へ開くのか、暮らしの内側へ取り込むのか。

そこまで考えることで、自分たちの暮らしに合う位置が見えてくると思います。

27坪の自邸で、土地選びから設計、住宅性能、実際の暮らしまで何を考えたのかは、こちらの記事にまとめています。

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Profile
27坪の狭小地に自邸を設計し、現在も実際に暮らしています。
広さに頼らず、視線や居場所のつくり方で暮らしの質が変わることを実感しています。
その経験をもとに、限られた条件でも豊かに暮らせる住まいを設計します。
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