広さに頼らない設計

面積を削って、質に使う|27坪の自邸で「削ったもの・お金をかけたもの」

一級建築士|ドル

「小さい家にすれば安くなる」

これは半分正しくて、半分違うと感じています。

床面積を抑えれば、基礎や屋根、外壁、内装など、面積に応じて増える部分のコストは抑えやすくなります。

ただ、私が自邸で考えたのは、単純に建築費を安くすることではありませんでした。

面積を必要以上に増やさず、その分を毎日の暮らしに影響する部分へ使う。

それが、27坪の自邸で考えたコスト配分です。

この記事では、一般的な予算の使い方ではなく、私自身が27坪の自邸で、

  • どこでコストを抑えたのか
  • その分をどこに使ったのか
  • 実際に暮らして、その選択をどう感じているのか

を紹介します。

自邸では、広さを抑えた分、坪庭・自然素材・造作浴室・断熱性能など、

毎日の暮らしで感じられる部分にコストを使いました。

一級建築士 ドル
一級建築士 ドル

家づくり全体で「何にお金を使うか」という考え方については、こちらの記事で整理しています。

▶︎ 同じ予算でもここまで変わる|家づくりのお金の使い方

小さい家にして削れたコスト

床面積を抑えると、基礎・屋根・外壁・内装など、面積に応じて増える部分のコストは抑えやすくなります。

ただし、25坪の家が30坪の家より5/6の価格になるわけではありません。

キッチンや浴室、給湯器、玄関など、家を小さくしても大きくは減らない費用があるからです。

小さい家の建築費や坪単価については、こちらの記事で詳しく整理しています。

▶︎ 小さい家は本当に安いのか|一級建築士が考える「広さ」と「質」のお金の使い方

私が自邸で考えたのは、単純に建築費を安くすることではありませんでした。

面積を抑えることで生まれた予算を、どこへ使うか。

そこが一番大切でした。

抑えたものその分、使ったもの
床面積坪庭
必要以上の個室書斎コーナー・籠もり部屋
大きなLDK素材や仕上げ
広い土地駅からの距離
面積の余裕断熱性能・仕上げと空間の質

建物そのもののコストは抑えやすくなる

床面積を小さくすると、単純に施工する“面積”が減ります。

  • 基礎が小さくなる
  • 外壁面積が減る
  • 屋根面積が減る
  • 床・壁・天井などの仕上げ面積が減る

つまり、使う材料や施工する範囲が減るため、同じような仕様・条件で比較すれば、建物全体のコストは抑えやすくなります。

ここは特別な工夫をしなくても、「家を必要以上に大きくしない」という選択そのものが効いてくる部分です。

我が家のリビングの広さだけを切り取ると、約4畳半です。

感覚的には、一般的な子ども部屋くらいの広さです。

自邸|約4畳半のリビング

数字だけを見ると、決して広いリビングではありません。

それでも実際に暮らしてみると、私たち夫婦にとってはちょうど良い広さだと感じています。

視線の抜けや隣接する空間とのつながりを意識することで、床面積以上の広がりを感じられるからです。

家の広さを考えるときは、単純な畳数だけではなく、

その場所からどこまで視線が抜けるか。

隣の空間とどうつながっているか。

といったことも大切だと思います。

実際に27坪で暮らして感じたメリット・デメリットは、こちらの記事で詳しく紹介しています。

▶︎ 27坪の家は狭い?|一級建築士が自邸で実感したコンパクトな家のメリット・デメリット

小さい家を広く感じさせるために自邸で意識した『視線の抜け』については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

▶︎ 27坪の狭小地でも開放感はつくれる|坪庭で視線をデザインした自邸の実例

設備・機器のコストも抑えやすい

家がコンパクトになると、冷暖房する空間も小さくなります。

そのため、断熱性能や間取り、設備計画によっては、

  • エアコンの必要能力を抑えられる
  • 台数を少なくできる
  • 暖房設備をコンパクトにできる

といった可能性があります。

単純に「小さい家なら設備が安くなる」とは言えませんが、家全体の熱負荷を抑えやすくなることは一つのメリットです。

自邸でも、床面積を抑えることと断熱性能を高めることは、セットで考えました。

ランニングコストにも効いてくる

小さい家のメリットは、建築時だけではありません。

住み始めてからも、

  • 冷暖房する空間が小さい
  • 室内温度を安定させやすい
  • エネルギー消費を抑えやすい

といった効果が期待できます。

もちろん、光熱費は家の大きさだけでは決まりません。

断熱性能や気密性能、窓、設備、設定温度、暮らし方などによっても大きく変わります。

それでも、同じ性能で比較するなら、暖めたり冷やしたりする空間がコンパクトなことは有利に働きます。

自邸では断熱等級6とし、家を27坪に抑えることと性能を高めることの両方を考えました。

建てるときの金額だけではなく、

住み始めてから長くかかるお金まで含めて考える。

これも家の大きさを決めるときに大切な視点だと思います。

我が家の実際の暖房費については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

▶︎ 高性能住宅の暖房費は実際いくら?札幌・断熱等級6の自宅で冬のガス代を公開【2025-2026】

実際に暮らして、どこにお金を使って良かったか

一方で、実際に自邸を設計して感じたのは、

「ただ小さくすればいいわけではない」

ということでした。

面積だけを削ってしまうと、単に狭い家になってしまう可能性があります。

そこで自邸では、面積を抑えた分、毎日の暮らしの中で満足度につながる部分には、あえてコストを使いました。

“質”にコストを使った

漆喰壁と無垢床
杉板と塗壁

面積を抑えた分、意識したのは、

広さを削っても、暮らしの質は削らないこと

でした。

例えば自邸では、

  • 造作の浴室
  • 壁や天井の板張り
  • 無垢床
  • 漆喰などの自然素材

といった部分にコストを使っています。

一般的に普及しているビニールクロスや化粧フロアを否定するわけではありません。

コストや施工性、メンテナンス性を考えれば、とても合理的な選択だと思います。

その上で、自然素材には自然素材ならではの良さがあります。

光の当たり方によって表情が変わったり、触れたときの質感が違ったり、時間とともに風合いが変化したり。

こうした部分は、性能数値や床面積には表れません。

それでも毎日暮らしていると、何気ない瞬間に感じるものがあります。

小さい家では空間との距離が近い分、素材の違いもより身近に感じやすいと思います。

面積を抑えた分のコストを、こうした「毎日触れる質」に使うことで、空間の満足度は大きく変わると感じています。

造作浴室にお金を使った理由

ヒバを使った浴室

浴室も、コストを抑えるだけなら一般的なユニットバスを採用する方法がありました。

しかし自邸では、ハーフユニットに木を組み合わせ、坪庭を眺められる浴室にしています。

一般的なユニットバスと比べれば、手間もコストもかかります。

それでも採用したのは、浴室を単に「体を洗う場所」にしたくなかったからです。

  • 毎日入るお風呂から坪庭が見える。
  • 木の天井や壁を眺めながら過ごせる。

そうした時間にお金を使うことが、私たちの暮らしには合っていると考えました。

実際に暮らしてみても、ここはコストをかけて良かったと感じている部分です。

27坪の土地でも坪庭をつくった

寝室から見た坪庭

自邸は敷地面積27坪です。

決して余裕のある敷地ではありません。

面積効率だけを考えるなら、坪庭をつくらず、その分を室内に取り込むという考え方もあったと思います。

それでも、自邸では坪庭をつくりました。

坪庭があることで、浴室や寝室など1階の複数の場所から緑を感じることができます。

また、室内から外へ視線が抜けることで、実際の床面積以上の広がりも感じられます。

つまり坪庭は、

床面積を減らしてしまう場所ではなく、室内の質を高めるための余白

として考えました。

27坪という限られた敷地だからこそ、すべてを室内として使い切るのではなく、あえて外部空間を残す。

これも、広さより「どう感じるか」を優先した部分です。

断熱性能にもコストを使った

札幌で暮らす以上、断熱性能も削りたくない部分でした。

自邸は断熱等級6、一次エネルギー消費量等級8、BEI0.64という仕様にしています。

性能を高めれば、その分だけ建築時のコストは増えます。

それでも、完成したときだけではなく、その後何十年と暮らすことを考えれば、ここにはお金を使う価値があると考えました。

私自身は、

家を大きくして性能を削るより、面積を抑えて家全体の性能を高める。

という方を選びました。

これも、自邸のコスト配分を考えるうえで大きな判断でした。

BELS評価書

坪単価はむしろ上がりやすい

小さい家を考えるときに、知っておきたいことの一つが坪単価です。

小さい家は坪単価が高くなる、というよりも、

床面積が小さいほど、面積に比例しない費用の影響が大きくなります。

少し身近な例で考えると、ラーメンの普通盛りと大盛りに近いかもしれません。

普通盛りから大盛りにして麺の量が増えても、器や厨房、調理に必要な設備まで同じ割合で増えるわけではありません。

  • キッチンや浴室などの設備
  • 給湯器
  • 玄関
  • 設計や申請にかかる費用

など、床面積を小さくしても大きくは減らない費用があります。

金額のイメージ

例えば30坪の家を25坪にしても、キッチンや浴室がなくなるわけではありません。

そのため、建築費の総額は下がっても、それを坪数で割った坪単価は高く見えやすくなります。

逆に、家を少し大きくすると総額は上がっても、増えた面積すべてに同じだけの費用がかかるわけではないため、坪単価は下がって見えることがあります。

もちろん住宅はラーメンほど単純ではありませんが、「大きくした分だけ、すべての費用が比例して増えるわけではない」というイメージです。

さらに自邸のように、面積を抑えた分を自然素材や住宅性能、造作などへ振り分ければ、坪単価はより高くなることもあります。

だから私は、

坪単価だけで家の高い・安いを判断するのは難しい

と考えています。

大切なのは、最終的な建築費と、その予算でどのような暮らしを実現できるのかを見ることです。

小さい家の建築費や、なぜ坪単価が高く見えやすいのかについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

▶︎ 小さい家は本当に安いのか|一級建築士が考える「広さ」と「質」のお金の使い方

小さい家で考えたコストの使い方

27坪の家づくりを通して感じたのは、

小さい家は、単にコストを削るためのものではない

ということです。

面積を抑えることで、建物全体のコストはコントロールしやすくなります。

そこで生まれた余白を、

  • そのまま建築費の削減に使う
  • 住宅性能に使う
  • 素材に使う
  • 設備に使う
  • 庭や空間の質に使う

どこへ振り分けるかは人によって違います。

自邸では、床面積をできるだけ増やすことよりも、

断熱性能や自然素材、坪庭、造作浴室など、毎日の暮らしで感じられる部分

に予算を使いました。

もちろん、広い家を否定しているわけではありません。

家族が多ければ必要な個室も増えますし、大きなリビングや収納に価値を感じる人もいます。

大切なのは、

自分たちは何にお金を使えば、暮らしの満足度が上がるのか

を考えることだと思います。

同じ予算でも、広さ・性能・素材・外部空間のどこを優先するかによって、完成する家は大きく変わります。

予算を「何に使うか」という考え方については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

▶︎ 同じ予算でもここまで変わる|家づくりのお金の使い方

まとめ

小さい家は、単純に建築コストを抑えるためだけの方法ではありません。

床面積を抑えることで、建物全体のコストは抑えやすくなります。

ただ、小さい家だからこそ、

「限られた予算をどこに使うのか」

という判断は、より大切になります。

広さを削ることで生まれた余白を、そのまま節約に使うのか。

それとも、性能や素材、設備、庭など、自分たちが大切にしたい部分へ振り分けるのか。

自邸では、面積を抑えることで生まれた余白を、坪庭や自然素材、造作浴室、断熱性能などに使いました。

少なくとも私たちにとっては、床面積を数坪増やすことよりも、

「毎日どんな空間で過ごすのか」

にお金を使ったことが、暮らしの満足度につながっています。

小さい家とは、単にコンパクトな家ではありません。

限られた予算の中で、自分たちが大切にしたいものを選ぶ家づくり。

27坪の自邸で暮らしてみて、私はそんなふうに感じています。

この記事では「どこでコストを抑え、どこにお金を使ったか」を中心にご紹介しました。

土地の広さ・駅からの距離・住宅性能・2階リビング・坪庭など、家づくり全体で私たちが何を選び、何を手放したのかについてはこちらの記事でまとめています。

▶︎ 一級建築士が自邸で「選んだもの・捨てたもの」|27坪の家づくりで考えた優先順位

この記事を読んだ後に考えてほしいこと

小さい家を考えるときは、「どこまで面積を減らせるか」だけではなく、

その分の予算を何に使いたいのか。

を一度考えてみてください。

例えば、

  • 冬の暖かさ
  • 毎日触れる素材
  • お風呂やキッチン
  • 庭や外部空間
  • 趣味や仕事の場所
  • 駅からの距離
  • 家事のしやすさ

など、自分たちが暮らしの中で大切にしたいものを書き出してみます。

そのうえで、

「広さを少し抑えることで、守れるものはあるか。」

を考えてみてください。

小さくすること自体が目的ではありません。

必要な広さはきちんと確保したうえで、その先にある予算を、自分たちにとって価値のある部分へ使えるのであれば、コンパクトな家も一つの選択肢だと思います。

反対に、必要な個室や収納まで削らなければ成立しないのであれば、無理に小さくする必要はありません。

大切なのは、

「何坪の家にするか」ではなく、「限られた予算で、何を大切にしたいのか」。

そこから家の広さを考えることだと思っています。

私たちの場合は、限られた予算の中で床面積を抑え、その分を自分たちが大切にしたい場所へ使いました。

ただ、何にお金を使うかを考える前には、まず家づくり全体でいくらまで使えるのかを整理しておく必要があります。

私が自邸で、総予算・建物・土地・諸費用をどのような順番で考えたのかはこちらにまとめています。

▶︎ 家づくりの予算はどう決める?土地・建物・諸費用を一級建築士が整理

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Profile
27坪の狭小地に自邸を設計し、現在も実際に暮らしています。
広さに頼らず、視線や居場所のつくり方で暮らしの質が変わることを実感しています。
その経験をもとに、限られた条件でも豊かに暮らせる住まいを設計します。
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