今でも「やって良かった」と思う設計|27坪の家で実感した暮らしの満足度
家づくりでは、「やって後悔したこと」や「失敗しないためのポイント」を紹介する記事をよく見かけます。
もちろん、後悔を減らすことは大切です。
でも、実際に住み続けていると、それ以上に感じるのは「毎日やって良かったと思えること」の大切さです。
私は一級建築士として住宅を設計しながら、自分自身でも敷地27坪・延床約27坪の家を設計し、実際に暮らしています。
2025年12月から住み始めて約半年。
設計した当時は「きっと良い家になる」と思って採用したものもあれば、正直なところ半信半疑だったものもあります。
しかし暮らしの中で感じる満足度は、図面を描いていた頃の想像とは少し違いました。
- 毎朝カーテンを開けた瞬間の景色。
- 仕事から帰って玄関を開けたときの空気感。
- 一日の終わりに入るお風呂。
そんな何気ない時間こそ、「この設計にして良かった」と感じています。
この記事では、一級建築士として設計し、施主として実際に暮らしたからこそ分かった今でも毎日「やって良かった」と思う設計をご紹介します。
「家は広さよりも、居心地。」
私自身が住みながら実感していることを、正直にお伝えできればと思います。

無垢床・塗り壁を採用して良かった理由|毎日の満足度が変わった


もし「一番満足していることは?」と聞かれたら、私は迷わず自然素材を選んだことと答えます。
無垢フローリングや塗り壁は、性能表に数字で表れるものではありません。
だからこそ、家づくりではコストを優先して諦める方も少なくありません。
ですが、実際に暮らしてみると、その価値は毎日の生活の中で少しずつ積み重なっていきます。
- 朝起きて裸足で歩いたときの無垢床のやさしい感触。
- 塗り壁ならではの柔らかな光の反射。
- 仕事から帰ってきたときに感じる木の温もり。
どれも派手な感動ではありません。
でも、その小さな心地よさが毎日続くことで、「この家が好きだな」と思える理由になっています。
私は家づくりで、面積を少し抑える代わりに素材へ予算を回しました。
住み始めてからは、その判断は間違っていなかったと何度も感じています。
家は毎日触れ、毎日目にする場所です。
家づくりでは設備や性能は数字で比較できます。
でも「居心地」は数字では比較できません。
だからこそ、毎日触れる素材にこだわることは、暮らしの満足度を高める大きな要素なのだと思います。
毎日触れるものだからこそ、
素材の心地よさは暮らしの豊かさにつながります。
木の温もりを感じる玄関|帰宅した瞬間に「帰ってきた」と思える空間


家に帰ってきて、一番最初に目に入る場所が玄関です。
だからこそ、玄関の印象はとても大切だと考えていました。
我が家では、無垢床だけでなく、壁の一部にも木を張り自然素材の温もりを感じられる空間にしています。
玄関ドアも木製の断熱ドアです。
その玄関ドアを開けると木のやわらかな表情が迎えてくれる。
たったそれだけのことですが「帰ってきたな」と自然に気持ちが切り替わります。
家づくりでは、リビングやキッチンに予算をかける方が多いと思います。
もちろん、それも大切です。
でも、一日に何度も通る玄関だからこそ、最初に感じる空気感を大切にして良かったと感じています。
家の第一印象は、来客だけでなく、
毎日帰ってくる自分自身のためにつくるものだと思います。
ダイニングを一番の居場所にした設計|自然と長居したくなる空間



家の中で一番長く過ごす場所はどこでしょうか。
リビングという方も多いかもしれません。
しかし我が家では、自然とダイニングにいる時間が一番長くなりました。
食事をするだけでなく、本を読んだり、仕事をしたり、夫婦の会話の場になったり。
気が付くと、私はいつもダイニングに座っています。
これは偶然ではありません。
設計するときから、「長く居たくなる場所」をつくりたいと考えていたからです。
- 窓から入る光。
- 坪庭へと視線が抜ける景色。
- 木の素材感。
- 書斎コーナーとの繋がり。
それらが重なり合って、自然と落ち着ける場所になりました。
広いリビングがなくても、心地よく過ごせる居場所はつくれます。
実際に住んでみて、それを毎日実感しています。
広さよりも、「ここに座っていたい」と思える場所があることの方が、
暮らしの満足度は高いと感じています。
坪庭のある暮らし|毎朝の景色が一日の気持ちを変えてくれる



坪庭の記事はこれまでにも何度か書いてきました。
それでも、「採用して本当に良かったものは?」と聞かれたら、やはり坪庭は外せません。
毎朝カーテンを開けると、最初に目に入るのは緑です。
季節によって葉の色が変わり、雪が積もれば冬らしい景色になります。
忙しい朝でも、その景色を見るだけで気持ちが落ち着き、「今日も頑張ろう」と自然に思えます。
坪庭は、家を広く見せるためだけのものではありません。
毎日の暮らしの中に季節を取り込み、心を少し豊かにしてくれる存在です。
狭小住宅では、「庭は諦めるもの」と思われがちです。
でも私は、小さい家だからこそ、庭をどこかにつくる価値は大きいと感じています。
庭は広さではなく、
毎日目にすることに価値があります。
実はこの坪庭、最初から今の形だったわけではありません。
西側に配置する案と東側に配置する案で最後まで悩みました。
その設計の過程はこちらの記事で詳しく紹介しています。
造作風呂と坪庭|旅館のような時間を楽しめる空間になった



我が家のお風呂は、ハーフユニットバスを採用し、壁を板張りにしています。
さらに、お風呂から坪庭を眺められるように計画しました。
正直に言えば、これは誰にでもおすすめできる設計ではありません。
何よりコストが大幅増になってしまうからです。
それでも、我が家は小さくしてその分だけ質を高める、というコンセプトの自分の家だからこそできたと思っています。
仕事を終えて家に帰り、お風呂に入る。
板張りのやさしい雰囲気と、窓の向こうに見える坪庭。
まるで旅館に来たような気分で、一日の疲れをゆっくりとリセットできます。
毎日使う場所だからこそ、その時間が楽しみになる設計には大きな価値があります。
旅館のお風呂のようで、住む前に想像していた以上に快適です。
入浴時間が長くなりました。

毎日入る場所だからこそ、
少し贅沢なくらいが暮らしを豊かにしてくれるのだと思います。
ガス乾燥機・食洗機は採用して正解だった設備

家づくりで採用して良かった設備を挙げるなら、家事の時短化設備です。
代表的なのがガス乾燥機です。
ガス乾燥機を採用する方が多く、正直「本当にそこまで便利なの?」と懐疑的に思っていました。
しかし実際に暮らし始めると、その便利さは想像以上でした。
洗濯物を干す時間がなくなり、天気を気にすることもありません。
何より仕上がりが、“フワフワ”
夏場は外もジメジメで洗濯物が乾きにくく、衛生的にも気になるところ。
そんな環境でも短時間でふんわり乾くので、洗濯が大きな負担ではなくなりました。
家事が楽になるというだけではありません。
洗濯機を回し終えた後の「干さなきゃ」という小さなストレスがなくなるだけで、思っていた以上の余裕が生まれます。
毎日のことだからこそ、その積み重ねはとても大きいと感じています。

ガス乾燥機と同じくらい、毎日助けられているのが食洗機です。
食事を終えたあと、食器をセットしてスイッチを押すだけ。
ほんの数分の作業ですが、その後の時間を家族との会話や自分の時間に使えるようになりました。
以前は「手で洗えばいい」と思っていました。
でも、毎日続く家事だからこそ自動で任せられることには大きな価値があります。
家づくりでは設備を削って予算を調整することもあります。
しかし、毎日使うものについては少し予算をかけても十分に元が取れると実感しています。
毎日使う設備は、価格よりも「使う回数」で価値が決まるのかもしれません。
便利な設備は、時間だけでなく心の余裕もつくってくれます。
収納は「量」より「場所」|分散収納で片付けが続く家になった



収納は「たくさんあればいい」と思われがちです。
でも、実際に暮らして感じたのは「使う場所の近くに収納があること」の方が大切だということでした。
我が家では大きな収納を一つ設けるのではなく、必要な場所に収納を分散しています。
- 文房具はダイニングの近く。
- 掃除道具は使う場所の近く。
- 日用品もそれぞれ使う場所に収納しています。
そのおかげで「あとで片付けよう」が減りました。
使ったらその場でしまえる。
たったそれだけですが、家が散らかりにくくなり片付けも苦になりません。
収納計画は収納量だけではなく、「しまうまでの動作」を考えることが大切と、住んでから改めて感じています。
収納は量ではなく、
使う場所との距離が暮らしやすさを左右します。
コンパクトな書斎コーナー|広さより居心地が大切だった

書斎は広くなければ使いにくい、以前はそんなイメージを持っていました。
そのため自邸を設計するときも、大きな書斎をつくるか少し迷いました。
結果として選んだのは、コンパクトな書斎コーナーです。
住み始めてみると、この選択は予想以上に満足度が高いものでした。
- 仕事をしたいとき。
- 少し本を読みたいとき。
- 一人で考え事をしたいとき。
そんな時間に自然と足が向きます。
必要なのは広さではなく、落ち着いて過ごせる居場所だったのだと気付きました。
小さな家だからこそそれぞれの居場所を丁寧につくることの大切さを実感しています。
広い書斎よりも、
「ここにいたい」と思える場所があることの方が大切でした。
ルーフバルコニーは意外と使う|暮らしにゆとりを与えてくれた



設計中、ルーフバルコニーについてはいろいろな意見を耳にしました。
「結局使わなくなるよ。」
そんな話も少なくありませんでした。
実際に住んでみるまでは私自身も少し不安がありました。
しかし、暮らし始めると予想とは違いました。
天気の良い日に少し外へ出て風を感じたり、景色を眺めたり。
長時間過ごすわけではありません。
でも、その「少し外へ出られる場所」があるだけで暮らしにゆとりが生まれました。
家の中とは違う時間が流れる場所。
それが我が家にとってのルーフバルコニーです。
もちろん、誰にでも必要なものではありません。
ですが、我が家の暮らしにはなくてはならない居場所になっています。
使う時間の長さではなく、
「あること」が暮らしを豊かにする空間もあります。
妻は大の虫嫌いで、夏にルーフバルコニーで食事をしようと誘っても、虫が来るから外に出たくないと断られます。

まとめ|住んでから実感したのは、「広さよりも空間の質」
住み始めて半年強。
振り返ってみると、「やって良かった」と思うことの多くは、高価な設備や特別な間取りではありませんでした。
- 毎朝目にする坪庭。
- 帰宅したときに感じる木の温もり。
- 落ち着いて過ごせるダイニング。
- 一日の疲れを癒やしてくれるお風呂。
- 家事を助けてくれる設備。
どれも、一つひとつは小さな工夫です。
しかし、その小さな心地よさが毎日積み重なることで、「この家にして良かった」という満足感につながっています。
家づくりでは、広さや性能、設備の数に目が向きがちです。
もちろん、それらも大切です。
でも、私が一番伝えたいのは「居心地を大切にすること」です。
広さよりも、空間の質。
豪華さよりも、毎日心地よく過ごせること。
住んでからの満足度は、そんな積み重ねで決まるのだと私は自邸での暮らしを通して実感しています。
これから家づくりを考えている方は、
ぜひ「どんな家に住みたいか」だけでなく「その家でどんな時間を過ごしたいか」を想像しながら設計を考えてみてください。
その答えが、きっと長く愛着を持って暮らせる家につながるはずです。
もしこれから家づくりを始める方や、「何から考えればいいの?」と迷っている方は、まずは家づくり全体の流れを知ることをおすすめします。
私自身が実際に家を建てた経験をもとに、「失敗しないための家づくりの進め方」をロードマップにまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。





