27坪の家で老後は暮らせる?一級建築士が自邸をもとに考えたこと
27坪の家でも、老後まで暮らしていくことは十分できると思っています。
むしろ、年齢を重ねてからは「広いこと」よりも、移動距離が短く、自分たちで管理しやすいことの方が大切になるかもしれません。
ただし、考えておきたいのが階段です。
特に我が家は2階リビングなので、老後まで今とまったく同じ暮らし方ができるとは考えていません。

「27坪の家は、老後には狭くないのか。」
「小さな家を建てても、ずっと暮らしていけるのか。」
家を建てるとき、今の暮らしだけではなく、20年後、30年後のことまで気になる方は多いと思います。
私自身、札幌市に敷地27坪・延床約27坪の自邸を設計し、実際に暮らしています。
現在は夫婦2人暮らしです。
今のところ27坪という広さに不便を感じてはいません。
ただ、「今快適だから老後も大丈夫」とは考えていません。
年齢を重ねれば、今は何とも思っていない階段や家事動線が負担になる可能性があります。
では、27坪の家で老後まで暮らすためには、何を考えておけばよいのでしょうか。
自邸の間取りも振り返りながら考えてみます。
27坪という広さ自体は、老後の問題になりにくい
まず、私は「27坪だから老後には狭い」とは考えていません。
むしろ老後のことだけを考えれば、コンパクトな家にはメリットもあります。
- 家の中の移動距離が短い
- 掃除する面積を抑えられる
- 冷暖房する空間が小さい
- 家全体を把握しやすい
- 修繕や維持管理する面積も抑えやすい
- 必要以上に物を増やしにくい
若いときは、広い家に魅力を感じることもあると思います。
しかし、年齢を重ねても同じように家を管理できるとは限りません。
使っていない部屋まで掃除をし、大きな庭を管理し、家の端から端まで歩く。
広さは余裕を生みますが、同時に「管理する場所」も増やします。
また家が大きくなれば当然、外壁面積・屋根面積も大きくなり、塗装の塗り替えなどのランニングコストは大きくなります。
そう考えると、
老後に大切なのは、広い家よりも「自分たちで無理なく管理できる家」なのではないか。
私はそんなふうに考えています。
老後に問題になるのは「広さ」より「上下移動」

一方で、コンパクトな家なら何でも老後に向いているわけではありません。
特に2階建ての場合、考えておきたいのが階段です。
若いうちは、
「階段くらい毎日上ればいい。」
と思えるかもしれません。
実際、私も今は階段を負担に感じていません。
しかし、70代、80代になったときも同じとは限りません。
足腰が弱くなったり、ケガをしたりすれば、階段の上り下りそのものが生活上の大きな負担になる可能性があります。
だから老後を考えるときは、
家が何坪あるかよりも、階段を使えなくなったときにどこまで生活できるのか。
2階LDKを考えるにあたり、ここも念頭に入れておいた方が良いと思います。

老後を考えるなら「1階で何ができるか」を見る
私自身、実務で住宅設計を行なっており、敷地の大きさの他、眺望や彩光の関係で、2階LDKを提案することはあります。
2階LDKの間取りを考えるとき、私は老後について一つの基準を持っています。
それは、
1階だけで、生活のどこまでを完結できるか。
ということです。
特に確認したいのは、
- 寝る
- トイレへ行く
- 入浴する
- 着替える
- 洗濯する
- 玄関から出入りする
といった毎日の生活です。

これらがすべて1階と2階に分散していると、階段を使う回数は多くなります。
例えば、
1階で入浴する
↓
2階LDKでくつろぐ
↓
1階の寝室で寝る
という暮らしでは、元気なうちは問題がなくても、年齢を重ねたときに負担になるかもしれません。
老後のためにすべてを1階へ配置する必要はありません。
ただ、
「もし階段が大変になったら、この家ではどう暮らすだろう。」
と一度考えておくことには意味があると思います。
我が家の場合|27坪・2階リビングの老後

我が家は延床約27坪の2階建てです。
そして、LDKを2階に配置しています。
2階リビングにした大きな理由は、日当たりとプライバシーです。
実際の間取り図はこちらです。


周囲の建物からの視線を抑えながら明るさを確保し、坪庭や外部とのつながりを感じられるLDKにしたいと考えました。
実際に暮らしてみても、2階リビングにしたことには満足しています。
一方で、老後だけを考えれば2階リビングには明確な弱点があります。
それが階段です。
我が家の1階には、
- 玄関
- 寝室
- トイレ
- 浴室
- ランドリー
があります。
そのため、
寝る・トイレ・入浴・洗濯という生活の基本部分は1階で完結できます。
これは将来を考えたときにも、比較的良かった部分だと思っています。
ただし、キッチンとダイニング、リビングは2階です。
つまり、本当に階段を使えなくなった場合、今とまったく同じ暮らしを続けることはできません。
ここは2階リビングのデメリットとして、素直に認識しています。
2階リビングは老後には向かない?

では、老後まで暮らすなら2階リビングはやめた方がよいのでしょうか。
私は、そこまで単純ではないと思っています。
仮に30代で家を建てたとして、健康寿命で考えると階段をまったく使えなくなるまでには何十年もの時間があります。
その何十年間を、
「将来階段を使えなくなるかもしれないから。」
という理由だけで、今希望している暮らしを諦める必要があるのか。
これは家族によって考え方が違うと思います。
我が家の場合は、
今から老後まですべてを完璧にすることより、今の暮らしを大切にしながら、将来変化できる余地を残す。
という考え方を選びました。
もちろん、最初から平屋にできる土地と予算があり、現在の暮らしにも合っているのであれば、平屋は老後との相性がよいと思います。
ただし、「老後には平屋が正解」と決めてしまうのも少し違います。
土地の広さ、価格、日当たり、プライバシー、今の暮らし方。
家づくりでは、それらをすべて含めて考える必要があります。
2階リビングそのもののメリット・デメリットや、実際に暮らして感じた階段移動については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
階段を使うのが大変になったらどうするか
我が家も、将来は何らかの対応が必要になる可能性があります。
例えば、
- 階段へ手すりを追加する
- 階段昇降機の設置を検討する
- 1階の使い方を変更する
- 簡単な食事ができるスペースを1階につくる
といった方法が考えられます。
家を建てる時点ですべてを決めておくことはできません。
30年後にどんな設備があるのかも分かりませんし、自分たちの体の状態も分かりません。
だから私は、
将来起こるかもしれないことをすべて先回りしてつくるより、必要になったときに変更できる余地を残しておく。
という考え方でもよいと思っています。
老後のために、今の暮らしを犠牲にしすぎない
老後を考え始めると、家づくりではあらゆることが心配になります。
段差をなくした方がいい。
廊下を広くした方がいい。
車椅子でも使えるようにした方がいい。
寝室も水回りもLDKも全部1階にした方がいい。
もちろん、どれも将来への備えとして意味があります。
家族の状況によっては、最初からしっかり対応しておくべき場合もあります。
ただ、まだ何十年も先の可能性だけを考えて、現在の暮らしまで大きく制限してしまう必要があるのか。
私はそこには少し疑問があります。
我が家であれば、2階LDKをやめれば老後への安心感は増したかもしれません。
しかし、
- 2階だから得られる明るさ
- 外からの視線を気にしにくい暮らし
- 坪庭とのつながり
- ルーフテラスとの関係
など、現在の暮らしで得られているものも失っていたと思います。
そもそも条件に合う土地を探せていなかったと思いますので、家づくり自体を諦めなければいけなかったかもしれません。
家は老後だけを過ごす場所ではありません。
30代で建てれば、40代、50代、60代と長い時間をそこで過ごします。
だからこそ、
「老後に備えること」と「今を快適に暮らすこと」のバランスが大切です。
我が家でも、土地を選ぶときは広さだけではなく、駅からの距離を大切にしました。
27坪という小さな土地を選んだ理由と、土地探しで何を優先したのかはこちらの記事で詳しく紹介しています。
27坪だからこそ、老後に向いている部分もある
私は実際に27坪の家で暮らしていて、コンパクトな家は老後との相性が悪くないと感じています。
特に大きいのは、移動距離です。
我が家は家そのものがコンパクトなので、一つひとつの場所がそれほど離れていません。
寝室からトイレ。
寝室から浴室。
ランドリーから収納。
毎日のちょっとした移動が短くなります。
若いうちは数歩の違いを気にしないかもしれません。
しかし、その小さな違いが毎日何十年も積み重なります。
家事動線についても同じです。
大きな家だから家事が楽になるとは限りません。
むしろ、
必要な場所が近くにまとまっているコンパクトな家の方が、暮らしやすいこともあります。
これは老後だけではなく、今の暮らしでも感じていることです。
「1階完結」だけで老後を考えなくてもいい
ここまで1階での生活について書いてきましたが、もう一つ考えておきたいことがあります。
それは、家だけで老後を完結させようとしないことです。
例えば、
- スーパーまで歩けるか
- 病院へ行きやすいか
- 公共交通機関を利用できるか
- 車を運転しなくなっても生活できるか
- 雪かきや庭の管理が大きな負担にならないか
こうした周辺環境も、老後の暮らしには大きく影響します。
どれだけ完璧な平屋を建てても、車がなければ何もできない場所であれば、年齢を重ねてから困る可能性があります。
逆に、小さな2階建てでも、買い物や交通の利便性が高ければ暮らし続けやすいかもしれません。
つまり、
老後の暮らしやすさは、間取りだけで決まるわけではありません。
土地選びの段階から考えておきたいことだと思います。
27坪の家で老後まで暮らすために考えたいこと
27坪の家で老後まで暮らせるかを考えるなら、私は次のような点を確認します。
1.寝室とトイレの距離は近いか
夜中にトイレへ行くことを考えると、寝室とトイレは近い方が安心です。
長い廊下や階段を通らなければならない間取りは、年齢を重ねたときに負担になる可能性があります。
2.入浴・洗濯の動線が複雑ではないか
浴室、脱衣、ランドリー、収納の位置関係も大切です。
家がコンパクトでも、行ったり来たりする間取りでは家事は楽になりません。
3.階段を使えなくなった場合を想像できるか
2階建てなら、
「1階だけになったら、どこまで暮らせるだろう。」
と考えてみます。
完璧に生活できなくても構いません。
どう変更できそうなのかまで考えておくと安心です。
4.必要以上に段差をつくらない
数センチの段差でも、年齢を重ねるとつまずく原因になることがあります。
意匠上必要な段差なのか。
本当になくせないのか。
これは設計時に考えておいた方がよい部分です。
5.家だけでなく立地も考える
車を運転できなくなったあとでも生活できる場所なのか。
これは、間取り以上に重要になることもあります。
家づくりでは建物ばかりを見てしまいますが、「どこに建てるか」も老後への備えです。
老後のために大きな家が必要なわけではない
家づくりでは、
「将来家族が増えるかもしれない。」
「親と暮らすかもしれない。」
「老後には部屋が必要かもしれない。」
と、まだ起きていないことを考えて家を大きくしていくことがあります。
もちろん、その可能性が高いのであれば必要な準備だと思います。
ただ、可能性をすべて家の広さで解決しようとすると、家はどんどん大きくなります。
- 建築費も増えます。
- 冷暖房する空間も増えます。
- 掃除する場所も増えます。
- 修繕する面積も増えます。
私は27坪の家を建ててみて、
将来への余裕を「広さ」で持つのではなく、「変えられる余地」で持つという考え方もある。
と感じています。
まとめ|27坪かどうかより「暮らし続けられる家か」
27坪の家でも、老後まで暮らしていくことは十分できると思います。
そして、コンパクトだからこそ、
- 移動距離が短い
- 掃除や管理の負担を抑えやすい
- 冷暖房する空間が小さい
- 家事動線を短くしやすい
といったメリットもあります。
一方で、2階建てであれば階段は必ず考えておきたいところです。
特に大切なのは、
「階段を使えなくなったら、この家ではどう暮らすだろう。」
と一度想像してみることだと思います。
我が家の場合、寝室、浴室、トイレ、ランドリーは1階にあります。
そのため生活の基本部分は1階にまとまっています。
ただし、LDKは2階です。
将来、本当に階段を使えなくなれば、何らかの変更が必要になると思います。
それでも私は、老後だけを基準にして今の暮らしを決める必要はないと考えています。
今を快適に暮らすこと。
将来困りそうなことを想像しておくこと。
そして、必要になったときに変えられる余地を残しておくこと。
そのバランスが大切です。
老後に暮らしやすい家とは、単に「広い家」でも「平屋」でもありません。
自分たちが年齢を重ねたときにも、無理なく管理し、暮らし続けられる家なのか。
27坪という数字よりも、私はそこを大切にしたいと思っています。
老後のことを考えるときは、「平屋にするか」「何坪必要か」だけで考えなくても大丈夫です。
一度、今考えている間取りを見ながら、
- 階段を使うのが大変になったら、どこまで生活できるか
- 寝室とトイレは近いか
- 入浴や洗濯の動線は複雑ではないか
- 将来、部屋の使い方を変えられそうか
- 車を運転しなくなっても生活できる立地か
を確認してみてください。
そのうえで、
「今の暮らしを大切にしながら、将来変えられる余地があるか。」
を考えてみてほしいと思います。
老後のために今の暮らしをすべて変える必要はありません。
ただ、将来困りそうなことを一度想像しておくだけでも、今の間取りや土地を見る視点は変わると思います。
土地・予算・間取り・住宅性能まで含めて、家づくり全体の優先順位を整理したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

